前の女性が当り券を換金し、幾らか足して新しい宝くじを買った。売り場の初老の女性(六十年輩ぐらいか)は客にむけ「当たりますように~」とお祈りみたいにいった。
次は俺で調べてもらうためサマー・ジャンボくじ三十枚を差し出した。左側のディスプレイに「当落」が表示される。後ろにひとが居なかったから、たまには当たってみろよ! ほれ! 高額当選――。うんとちっちゃい声で喝を入れたが、末等三百円が三本の計九百円だった。二十七枚のはずれ券、明細に五百円玉一枚百円玉四枚を窓口から受け取った俺に女性はいった。当たりますように~。さっきと寸分たがわぬ節と抑揚だった。くじを買っても買わなくても「当たりますように~」が決め台詞なのだ。ありがとうございますより洒落てるなァ――。
その昔、まだ車券や舟券が手売りのころ、多摩川競艇か京王閣競輪の穴場の女性に、当たりますように~に似たことばをもらいながら、券を手渡された気がするのだが、きっとこれは旧式の記憶装置が起こす虚構であろう――。
九百円でどこかの競輪を一本で買いたいが面倒だ。近くにあるみずほ銀行まで歩き、ATMを操作、百円足した千円分の「ロト6」クイックピック・ワイドをキャッシュカードで購入した。
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