若い時分から何か新しいことをやろうとすると、まずは本屋で教則本や入門書を買いそろえる性質だった。それは歳をとっても変わっておらず、つい最近はボサノバが急にやりたくなって解説書を買ったりコード・ブックを探したり。音源までけっこう揃えたが、準備に時間を割いているうちに半分飽きてしまった。
そんな私だが競輪入門の本の類いを購入した記憶がない。阿佐田哲也の『競輪教科書』は読んでいるが、それはまあまあ競輪に馴染んできた頃合であり、競輪の解説を求めてという感じではなかったと思う。
こんな仕事をしていて失礼な話だが、私は競輪を他人に教えることが苦手である。というか、そういうことに対して親切ではない。
ま、そんなに詳しくならなくてもいいンじゃないか――。熱心に問うてくる人間に、突っ放すような捨て台詞を吐き、嫌われること多々だ。
高知GⅡの第八競走は②吉田拓矢-⑤武田豊樹と④南潤-⑦村上義弘で壮絶に叩き合った。そして最後はどうなったかというと、ガソリン切れの②-④並びで逃げているところを、まだ満タンの両者が⑦-⑤並びと化して捲ってしまったのだ。こんな競輪は入門ガイドが触れるはずもなく、説明してくれと頼まれても面倒くさいだけだ。
競輪の百態を学ぶには、その都度その都度、一個一個しかなかろうよ。
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