二十代の後半、競輪に淫した理由はいくつかあるが、真っ先にやられたのは競輪特有の、マークする、並ぶ、組むという競走形態だった。一着と二着を推理するギャンブルにはまさにもってこいの筋車券に私は病みついていった。
一番強い先行屋に一番強いマーク屋なのだから「逃げ切り・マーク」と「追込み・逃げ残り」がばんばん売れた。その三番手を三番め評価の選手が固めることも多かったから、当時は筋三人の車券がそれこそばんばん出ていたのかもしれないけど、一着と二着にしか目が向かないギャンブルのせいでそこらの記憶は曖昧である。
中野浩一のガマンか井上茂徳が抜く方どちらか一点に絞って買うことは、私にとって至福の――と言ったらちょいと大仰だけど――ギャンブルだった。
最近の脇本雄太-古性優作に昔の中野-井上がオーバーラップすることがある。と記せば異論もあろうけど、この十年二十年で一番の、競輪の根っこのエッセンスを体現してくれるコンビに思えるのだ。
むろん述べた十年二十年のあいだには幾つもの名コンビが生まれている。
が、その大半は前後を柔軟に変えうる連携が特徴で、大括りにすれば自力屋と自力屋のコンビだった。誤解をおそれず言ってしまうと、番手捲り可能な布陣でもあった。もちろんフレキシビリティーに富んだそれらの競輪を――たとえば平原康多と武田豊樹であり松浦悠士と清水裕友の連携を――私は大いに楽しんだ、いや過去形ではない、今も楽しんでいる。
脇本-古性を先行屋-マーク屋と表すのはおかしいかもしれない。普段の古性は自力選手でもある。でも、ぶっ放しに強い脇本の番手で仕事ができる選手が古性しかいないのなら、限定の先行屋とマーク屋の名コンビでよかろうよ。
明日(二十六日)から開幕の豊橋記念の最終レースに脇本雄太-古性優作の名前がある。三番手には御大の村上博幸だ。表題「脇本-古性は中野-井上の再来となりえるか」に則れば、そろそろ古性が抜く方が出てほしい気もするがどうだろう。とか言いながら、ズブズブにまで手を出しかねない明日の私が見える。
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