顔見せで走路を流す原田研太朗は辛口の野次のひとつも浴びたのかしら。でも今日日のお客さんはやさしいから、がんばれの温かい励ましに「よし今日こそは」と奮い立ったかもしれない。
毎日本命人気で九着二着四着、今日も一番人気に推されていたが、よくわからないうちにやっぱり七番手。おいおいおい。こりゃ駄目かいなと思ったら大外をすごい脚勢で来た。来たけど番手の選手にタイヤ差抜かれていた。
昔、川崎だったか花月園だったか、準決一本被りで負けた某が珍しく最終日の負け戦を走っていた。珍しくと記したのは、当時は断然本命の選手が準決で飛ぶと欠場してしまうことが多かったからだ。
選手紹介時の某はけっこう野次られていた。俺のまわりの男たちも辛辣なことばを浴びせていた。
レースは某の大楽で「捲り・マーク」の枠単は三百円あるかないかぐらいだったと記憶する。バンクをゆるゆる流しながら某が俺らの観戦している一センター附近に近づくと言葉がかかった。「某、お前はやっぱり強い。よくやった」がんがん野次っていたおっさんだった。そのあと仲間に車券を見せていた。こんなところで某は負けない、自慢げにそんなことを言ったのだったか、そこらの記憶はもうはっきりしない。
小松島記念は眞杉匠の優勝で幕を閉じた。二着に志智俊夫、三着に松浦悠士で二車単万シュー・三連単十万シューと荒れた。
「今回のもこもこ捲りを見てしまうと援軍なしの眞杉はきつい」「高久保雄介-志智は準決で相当量のつきを消費」と切った選手の一二着。「松浦はどうするんだろう。ま、あからさまに太田ラインの邪魔をすることはないんだろうけど……」と記せば、太田ラインは松浦に幻惑されたように七番手になってしまった。
確定板の「二、八、三」の数字を見て、「あぁ、第28回中野カップ(先日終了した久留米記念の冠)」とぽつり、頭の中でつぶやく俺はけったいな人間である。
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