最近の完全個人的出来事ですが、最近やたらとじいちゃんの部屋が騒がしい。

　80歳もとっくに過ぎて膝が痛くあまり外出できないため、もっぱら友達は僕のうちに集まっているようだ。以前は静かに囲碁をやっているのだが、最近は本当に騒がしい。

　老人特有の早朝への応対力で、朝5時頃にすでに数人の見知らぬ老人がウロウロしている。「え？このおじいさん達昨日から泊まってた？」ってぐらいの時間。

　何が騒がしいかというと、爆音で音楽が流れているのだ。一年ほど前に僕の使っていたタブレットを与えたのが原因だ。何やら夜な夜なタブレットのガイドブックを読み、最近では完全に使いこなしている。そのタブレットをスピーカーに繋いで音楽を流している模様。

　みんな片足三途の川に突っ込んでるような老人のため、皆総じて耳が遠い。そのため必然的にボリュームが上がってしまう。音が大きくなってしまうのはしょうがないにしても、時間が非常識すぎる。さすがに注意することにした。
　
　じいちゃんの部屋の扉を開けた

　「おい！朝方からうるさすぎるぞ！ちょっとは・・・」

　部屋の中では異様な光景が広がっていた。なんと、じじいどもが震える手で麻雀しているではないか。

　「うるさいから音量下げて！」

　「え、だってジャラジャラうるさいと家族に迷惑かかると思って、わざわざ流してるんだけど」

　なんと、麻雀の音を隠すために往年の名曲を流していたようだ。年寄りなりに気を使ってくれていたようだけど、何ともありがた迷惑なことだ。

　「麻雀の音より、爆音のりんごの唄の方が迷惑だから！今度からは音楽流さないで麻雀やって！」

　「うん分かった。それより今日のメンツを紹介してやるわ」

　東家　千勝(ちかつ)　じいちゃん(83)
　南家　まさひで(72)
　西家　ろくざえもん(89)
　北家　えぐぜむ(78)

　ちょちょ、ちょ、何「えぐぜむ」って？え、名前？新ウルトラマン？

　西家の「ろくざえもん」ですでに引っかかってたのに、その遥か上が来ちゃったんだけど！
　
　「えぐぜむってホントに本名ですか？」

　「うん。エグザエルじゃなくてえぐぜむだよーん！」

　一瞬の静寂の後。このくだらないボケに、半分ボケたような老人一同大爆笑。(いやー、歳は取りたくないなぁ)


　とりあえず、その後じいちゃんの部屋から大音量の音楽が流れることは無くなった。

　しかし、いただけない。「えぐぜむ」という名前のカルマから抜け出せない。もう何とも言えないモヤモヤが頭から抜けない日々がここ最近ずっと続いている。いくらパソコンで「えぐぜむ」を変換しても「エグゼ無」になってしまう。くそう、これじゃ天下のgoogleに頼っても答えが出てこない！
　
　老人というものは基本的に人畜無害なのだが、彼らは昭和のキラキラネームというパンドラの箱を持っているのだ。パンドラの箱を開けてしまい、名前の由来などあまり深く考えていると、さすが老人、いつの間にかその人がお星さまになっていることもある。結果迷宮入りになってしまう。

　ここで、僕からのアドバイス。

　「キラキラネームの由来は、失礼承知で本人に聞いてみよう！」

　
　実は、後日「えぐぜむ」本人に名前の由来をお聞きしました。

　「あのー、失礼ですがお名前の由来は？」

　「えーんと、たしか大した理由は無いってずっと言われてた。おら、次男なんだけども兄貴の名前の流れかなと。ほら、兄貴「ろくぜむ」じゃん？」

　「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

　おーーーーーい！おい！新種でてきちゃったよ！何さらっと「ろくぜむじゃん？」とか言ってんのこの爺さん！

　てか、共通部分の「ぜむ」ってなんなんだよ！？

　いや待てよ、「ろくぜむ」にはキチンとした名前の由来があるのではと思い聞いてみた

　「じゃあ、ろくぜむさんの名前の由来は何なんですか？」

　「本人に聞けばわかると思うけど…」

　「けど？」

　「ほら、ろくぜむ二年前に死んだじゃん」

　あちゃーー。お星さまになってたー。残念だなー、これほど顔も知らない老人に生きててほしかったと思うことは金輪際ないだろう。

　とりあえず、この爺さんの「ほら」の後の威力、まさにエクスカリバー。これからはこの人の事「ほらのおじいさん」と呼ぶとしよう。

　これまでがここ最近起こった出来事でございました。

　もし、「えぐぜむ」「ろくぜむ」「ぜむ」について情報お持ちの方いたら一報ください。