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闘犬と峰不二子

2014/04/13 21:20 閲覧数(1301)
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昼時の山手線だから車内は空いている。午後イチのアポが……、クライアントがどうしたこうしたと男の携帯電話が喧しい。俺は光沢のある背広を着た男を舌打ちし挑むように睨んだのだが、タケさん我慢しなきゃ、いまに刺されるぜ……、Kの説教が聞えてきそうだ。
Kは俺らのグループ一番の武闘派で負けず嫌い筆頭でもあった。
自称スノー・ボーダーの若者にKがしつこく絡んだのは関西の酒場だったか。俺はターンは下手だが直滑降なら絶対に退かない、せいので併走しながらとにかく真っ直ぐ、どっちが謝るか賭けようじゃないか。ターミネーターばりの筋肉質に迫られた相手の困惑が可笑しかった。
桂浜の坂本龍馬像の下でふざけて台風中継の真似をしていると、近くにある闘犬センターから犬の鳴き声が聞こえてきた。俺が冗談口で「いくらKちゃんが強くても土佐犬には勝てないだろう」と振ると、Kは真顔で「観光用の闘犬になら負けないと思いますよ」と答えたのだった。これだけでもKちゃん恐るべしなのだが、その晩のKが最高だった。
ゲーム・センターの〈UFОキャッチャー〉の前に立つKは真剣そのもので、ルパン三世シリーズの全収集まであと峰不二子だけなのだと長髪の店員に告げ、この位置ではフジコ人形を釣るのは絶対に無理だ、せめてもうちょっとチャンスのある場所まで移動してくれないか? お客さん勘弁して下さいと返すのが常套なのだろうが、Kに気圧されたか店員はゲーム機の裏側から鍵で開けて、渋々フジコをずらした。二、三回のチャレンジで峰不二子をゲットしたKはご満悦だった。
あれだけショート・ホープを美味そうに吸っていたKが体調を崩して煙草をやめたと言う。
皆、歳を取るのだ。
俺は昔よく真顔で唱えていた。この仕事は一日経つのがあっという間だ。製本のバイトでそろそろ昼飯かなと時計を見たら始業からたった一時間半だったという経験があるが、それとは雲泥である。一日が早ければ一年も早い。故に他の職種と較べると加齢を自覚するのが鈍い。名付けて「競輪記者相対性理論」だが、あのKが禁煙するようじゃ「論文」は取り下げるしかなかろう。
返盃、四万十、桂浜、甲浦……。

高知記念・三日目〈第十一競走〉浅井康の気性からして単純番手捲りではない? 振ったり止めたりする「間」は大塚健にとってコースを探せる「隙」かも。②①の二車単。

    


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