三十年前、最終競走が跳ねた西武園駅は大混雑で、俺は大概、東村山駅までだらだらと歩いた。毎度のことなので、いつの間にか道順も定まり、それは市立中学校の校門の前を通るコースとなった。金網越しに見える校庭の部活動の男女が眩しく、競輪で顔や体の煤けた俺はダストだった。午前中のバイトをやり過ごし、競輪場の門をくぐった瞬間に起こる安堵感は退出とともに消え去り、嫌な唾を意識しながら、疲れた脚を曳き摺るのだ。――いったい俺は何かになれるのだろうか。小博打の負けが俺を更に弱気にさせた。
数日前、懐かしむようにおなじ道程で一区間を歩いた。学校の周囲の道をランニングするジャージ姿の女生徒三人が俺を追い抜いていった。はしゃぎながら走り過ぎる彼女らは何が楽しいのか。――あれから四半世紀以上経ってはいるが、俺はまだ何にもなれやしない。
♪何かになりたいと/あなたは言う/何かになりたいと/あなたは言う/だれでもないあなたが/そのまま好きです/だれでもないあなたが/そのまま好きです/だれでもないわたしから/あなたへのことば
と、浜田真理子が歌ってはいるが。
〈西武園記念・決勝〉後ろを見ずに番手捲りなぞしない平原康多だが、最後だけは別なのか。関東五人ラインは、「平原の・平原による・平原のため」の西武園記念にも思えるが、初日も準決も平原の頭から打って丸落ちの俺は買う気がしない。「残党四人」から見繕って、
第十一競走、①③⑦と①⑦③。
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