八番手の菅田壱道の上昇は八割方「ブーメラン」覚悟に見えた。そのゆるゆるのスピードに併せて安心している取鳥雄吾を観察していたかのように、佐々木悠葵が一気に仕掛けた。すごい加速だった。もしくは取鳥が踏んでいないからそう感じたのか。吉田拓矢にも眞杉匠にも驚きだったのか、二人ともに二三車身ずつ離れ、それぞれ必死に追いかけるさまとなった。一瞬で場が沸きたった。ばらけた九人が収束するのに約三百メートルを要した。佐々木-吉田-眞杉(吉田も眞杉も多少脚にきたことだろう)、すこし離れて取鳥-松浦悠士-古性優作-荒井崇博(踏み遅れて割り込まれた)、けっこう離れて菅田-渡部幸訓。この時点で優勝も確定板も四人に絞られた。順序不同で吉田、眞杉、松浦、古性、むろん独善のジャッジメントである。
古性のガッツポーズをしこったような目で見ていた。ハンドル両手ばなしでレーサーを自身の軀のように操る様は、自由の風をまとっているようでもあった。
昨年の後半から今年の前半、なんだかんだいっても古性だろう。迷ったらやっぱり古性だろう。とりあえず古性だろう。と買った。車券の負けなどどうということもないが、どうした古性とおどろくほど弱った古性を何回も見る羽目となった。むろん最近の復調は認めていたし、今回の古性には感心しきりだった。ダービーに目一杯仕上げてきたんだな古性はともおもった。それでも買わなかった。買えなかった。もう古性だろうとはならなかった。毎度の負け惜しみだが、それも(が)競輪である。
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