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昔の名前で出ています――。

2020/05/16 17:52 閲覧数(620)
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 〽京都にいるときゃ/忍(しのぶ)と呼ばれたの/神戸じゃ渚(なぎさ)と名乗ったの/横浜(ハマ)の酒場に戻ったその日から/あなたがさがしてくれるの待つわ/昔の名前で出ています……小林旭が唄う『昔の名前で出ています』(作詞星野哲郎・作曲叶弦大)……の一節である。
 競輪選手はデビューからずうっと本名で全国を走りつづけるのだから、夜の蝶の源氏名の歌詞が当て嵌まるわけもないのだが、懐かしい名前をS級の負け戦、A級戦、チャレンジ戦に見つけると、ふと、昔の名前で……を口ずさみたくなるのは人情である。今では印も薄い八番車の某選手にも昔、毎日本命を背負って走った栄光の日々があったことを想いだす。やってはいけない温情車券を買ってしまう。マークの数字しかない某に、往時の捲りをと無理なる要求、やはり駄目かと肩を落とし、なんともいえない寂寞がおこる。
 松本整が活躍しておじさんパワーなどと褒めそやされた頃だ。相方のMCの女性が、ベテランの奮闘が伝播する素晴らしさを俺に振り、いかにも相槌の返答を求める雰囲気を醸し出した時、――「松本整は競輪選手として、車券の対象としても信ずべき選手であるが、だからといって彼が活躍したから俺も明日からがんばろう、などとおもったことは一度もない」と酬いた記憶がある。意地悪な皮肉屋も歳とともにすこしはまるくなっただろうか。
 もう二十年は出演しているのじゃないか、この天気予報の男性は――。また昔のアイドルの外見の変わりように驚いたりした時に、我も一緒だと老いを痛感する。
 神経質に日に幾度も体温を計測する。体温計を脇に挟み、ピッピッと音が鳴り、前後してテレビ画面の競輪でも打鐘が鳴ってるようじゃ、車券など当たらぬが必定であろう。

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