おおっとか、やるねえとか、選手の一挙一動に思わず声が出てしまうのが競輪観戦のツボであり、そこで競るかいとか、それじゃァ捲られるだけだろうとか、揶揄気味の呟きと嘲笑が、また楽しくもある。
選手にもお客にも「痛い」落車事故だが、瞬間一斉に起こる「嗚呼!」は、野球やサッカーの歓声とは瞭かに異種のどよめきであり、競輪ならではと想う次第だ。
昨日の快勝劇で気分の良い池田勇人がブンブン逃げる。マークの諸橋愛は吉澤純平のカマシを軽くいなし、返す刀で郡司浩平のドンピシャの捲りをも止めてしまった。しかも自ら番手捲りを打ちながらだ。風を切りながらの体当たり敢行に、おおっ、やるじゃないと誰かの声が聞こえた。
脇役の形容は諸橋ファンに叱られそうだが、主役を喰う「脇」といえばやっぱり諸橋だねえと、私は誰かに話しかけたくなる。
追伸――。松山ナイターの最終競走は池田憲昭-小川祐司と自在屋-先行屋の並び(しかも番手が地元選手だ)。好みの匂いが漂って来、一歩前に出てテレビとの距離を縮めてレースを見たが、何も起こらず人気本線の独占決着だった。
一声も発せられないのもまた競輪である。
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