三日間まるきりとは云わないが、ほとんど毎日もの足りなかった新田祐大と深谷知広が落ち着き払った様な捲りで好勝負を演じ、新田や深谷より瞭かに目立っていた北津留翼は舞い上がった様な《果敢過ぎる》走りで大敗した。
ま、競輪なんてこんなもんだろう――。
と、声に出さずにぼやいたら、ある映画の瑣末な一景をふと想い出した。
インターネット上のライヴ映像に興奮しきりの音楽事務所の社長と新人女子社員、これぞパンクだと早速そのバンド「少年メリケンサック」を探し始める。因みに映画のタイトルも『少年メリケンサック』だ。ところが見た映像は二十五年前の画で、当人達はとっくに中年から老年に差し掛かる年齢で現役でもなかった。で、紆余曲折ありながらそれでも再結成の目途が立ち、メンバーは練習スタジオに集まり、何十年振りかの音合わせとなるのだが、もう昔の面影は皆無で、聴くに堪えないだるい演奏を十数分位続けた後、ベースが「こんなもんだな」と捨て鉢に云い「こんなもんすね」とドラムが返すと「こんなもんじゃないでしょ!」と女性マネージャーがふんまんやるかたない顔で怒鳴った。
伊東記念競輪が終幕した。新田祐大の捲りに深谷知広の捲り、《日本代表》両者の、画に描いた様な力の決着だった。
寺崎浩平から流していた男が「ま、競輪なんてこんなもんだ」「こんなもんじゃないでしょう!」と自問自答しているのだが、その景を寺崎から流した当人が天井から俯瞰している画が浮かんで来て、寺崎から流した男は総身の毛が一本立ちになる様な気がした。
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