なんでそこで下げちゃうの、引いたら終わりだろう!
特別競輪の準決なんだぜ!
車を引いたら「何もない負け」になってしまうだけじゃないか!
と、俺は常々嘆いたり、怒ったり、涙目になったり――。
そんな俺が「引かない平原」を微塵も感じ取れなかったとは、情けない限りだ。
平原康多が稲垣裕之を体当たりでドカしにいったとき、俺の心臓にツンと小さな電流が走った。
やはり競輪は軀に悪い。
が、これだから競輪はおもしろい。やめられない。
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