ナイター競輪の歴史は北の大地函館から始まった。
照明灯に照らされたバンクを九名が走り闘う競輪を見たときの興奮を忘れないでいる。
幾度もそんな情緒的な拙文を記した。
実際相違ないと思うのだが、記憶は薄ぼんやりと色褪せ、いや、ほとんど思いだせなくなるくらい、というのが正直なところである。
でも「サマーナイトフェスティバル」の真打ちはなんたって函館競輪場だろう。
初日の特選競走、八人のS級S班のなかにぽつんと――「一〇五点」しか持っていない――菊池岳仁の名前があった。
あれ? 勉強不足の私は大レースの選考基準一覧のページを開く。「サマーナイトフェスティバル」――選考期間(二二年十一月~二三年四月)――「特選」九名の選考順は、GP優勝者>GⅠ優勝者>GⅡ優勝者(ヤンググランプリ含む)>平均競走得点上位者とあった。「ヤンググランプリを含む」――そうだ、菊池は昨年のヤンググランプリの覇者である。吉田有希の強烈な捲りを八分の一輪抜いての美酒だった。あれから約半年、あんなに強かった吉田は今不調のどん底にいる。FⅠの準決でもあっさり負けてしまう有様である。今回の大会にも選出されていない。あらためて勝負の世界の厳しさが身につまされる。っておれが言うのもちょっとおかしいか。
明日(初日)は、関東の「顔役」平原康多に任されるが、その平原も今、苦しんでいる。度重なる落車は痛々しく、平原ももう四十路なのだなと勝手な憂慮を覚えたりもする。菊池-平原は先日の前橋記念の二次予選で連係している。そのときの菊池は仕掛けられず拙走、平原は自分で踏み上げ「四」まで来て、なんとか権利着をクリアした。そのぶんもここは菊池がガンガン逃げる。そうじゃなくたって菊池だけが挑む立場、胸を借りる立場なのだからブン回すしかないのだけど、相手が相手だけに半周で終わってしまう可能性もある。まるきり先行できないケースもあろう。それでも平原の三着付けと一瞬考えたけど……やめたほうが無難なのかしら?
ま、あせることもあるまい。とりあえず今日(十四日)の小田原だ。第十一レースのA級決勝は南関六人の大連係で、「六対一」という滅多にお目にかかれない競輪が見られる。
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