幼少の頃、父親に連れられて行ったオートレース場は、赤鉛筆を只で拾える場所、金網越しに観戦した際、粗い舗装の走路から上がる細かい粉塵を顔に浴びた記憶を、川口市で生まれ育った家人から聞いたことがある。
開催日には風が運ぶ競走車のエンジン音が届くこの家に越してきて何年だろう。
昔はたまに川口オートを覗くと、よく競輪選手と出くわしたものだ。
後ろからポンと肩を叩かれふりむくと東京籍松戸所属の某選手で、斑走路の試走は各選手のコース取りを視認するのが肝心と教わった記憶がある。某に真顔で今オレ毎日バンク100周はやってるから――と豪語され、真に受けた俺はしばらく買ったことがあったっけ。典型的なB級の一発屋だった某の顔をぼんやりとだが忘れずにいる。
埼玉の名選手だった黄金井光良(期前)さんの練習地には〈川口オート〉の記載があったが、競輪選手がオートレース場の走路をモガいている景を見てみたかったなァ――と今になって想う。
川口オートレース場まで歩いて往けるこの場所が、かつて競輪に淫したこの俺の終の棲家になるのだとしたら、人生も満更捨てたものではないか――。
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