朝方の12Cｈ（関東地域のテレビ東京――現在は７Cｈ）で放映されていた開催情報を見るか、駅の売店で買い求めたスポーツ新聞のギャンブル欄で本日開催の競輪場を探す。近場がなければ競艇オート競馬で妥協する。ギャンブル・ホリデーの水曜は選択肢などないから種目かまわず出かけるしかない。
　おっ、今日から花月園がはじまる――！　四半世紀以上前には、それだけでときめく瞬間が、たしかに在った。
　電話投票、場外車券売場、スピード・チャンネル、インターネット投票・中継……全国の競輪を見、全国の車券を買える利便を歓ぶ俺が居て、昔の、現場でしか買えない・見られない有難味は格別だったと懐かしむ俺も居る。
　コロナウィルス禍により、今日は昼間がどこどこ競輪だけ、あとはミッドナイトがひとつ。場合によっては終日休催もあったりと寂しい限りだが、日によっては年寄りの俺には丁度いい場数と云えなくもない。もしかしたら、競輪の近未来のカタチが早めに見えてしまっただけのことかも知れない。
　四十代の数年間、毎日全国のレース・ダイジェストを見ることを己に課した。遊び疲れた夜などは半分寝ながらの視聴となり、フッと起きるともう四角～ゴール、又寝おち起きて四角附近と、一定のリズムで寝起きするものだからまるで「勉強」にならない――そんな過去まで羨ましく想う。
　激減しながらも競輪がどこかでやっているのを嬉しくないはずはなく、ミッドナイト一場が待ち遠しい夜もあるが、誤解をおそれずに申せば、観客の居ない競輪は俺の淫した競輪とは似て非なるものだ。もう十数年以上前から、観戦は八割方テレビ、とても金網族などとは名のれぬ俺だが、真っ青な空の下、眼の前で闘う、競輪の動を見、静を聴くこと、久延ならざるを願う。
　附記。今日（五月三日）は広島のモーニング開催のみ。午前十一時過ぎには本日の競輪は仕舞い……早朝上映の旧作一本でもう閉館の映画館みたいだ。