年下の、といってももう中堅からベテラン域に達する記者が、ぽつり言った。
どこのラインが前に入るかをこんなに考えなきゃいけない競輪になるとは思ってもみなかった、と。
ああ。だか、ふうむ。だか、ははは。どう返したかはっきりしないけど、私は小さく肯いていた。ただ電話の先の記者には私が肯定している様子は見えなかったろう。
私がやり始めた頃の競輪も誰がSをきめるかは大事だったけど、その誰はマーク選手に限られた。スタートの速いマーク屋が誰を受けるのか。番手で競るのか三番手まで下げるのか。もちろんそれだけじゃないにしても、大括りにすれば前がほしいのは自力じゃなく追込だった。S権利などという言葉まであった。
誰も前に入りたくない。頻繁なスタート牽制が問題になったのは年号が新しく平成にかわったあたりかしら。正確には記せないけど、そういう時代もたしかにあった。
今の競輪が悩ましいのは、先行屋乃至自在屋の誰が前受けを希むのか、逆に前には入りたくないのは誰なのか、中団がほしいのは誰なの? 枠番なり(ラインの構成員の車番が内枠であればあるほど希求する位置をとりやすい)を基本に、外枠でもS速い選手との比較を兼ね併せながら、所謂初手を想定するわけだけども、なかなか私のような盆暗の思惑どおりには並んでくれない。
そういうことか――と読めなかったことを悔やみ、いったいなんで又――と真逆の初手が解らない。
自戒を込めて述べるが、今の競輪の勘どころ鈍いひとの悪目立ちはけっこう寒々しい。
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