遠山競輪研究所
モーニング競輪調査( 2022/02/01 )
モーニング競輪は朝からレースが楽しめ、午前中に時間の余裕がある競輪ファンには嬉しい開催です。
2012年に試験的に開始されたモーニング競輪も徐々に開催数が増え、昨年(2021年1~12月)は105開催となり、ほぼ毎日どこかで開催されている状況となりました。
今回はモーニング競輪について調査してみました。
以下目次項目
1. モーニング競輪の歴史
JKAの「モーニング競輪」の試行実施として開催されたは、2012年11月の高知,別府,防府,豊橋の4場で9:00スタートの開催ですが、それ以前の2012年5月4日に岸和田競輪で9時45分スタートの早朝開催「岸和田モーニング945」が実施されており、これがモーニング競輪の起源とされているようです。
試行開催の結果を受けて、2013年6月28日の高知競輪でのガールズ戦を含む12レース制の開催を皮切りに正式スタートしました。
2017年10~11月に 別府・武雄・防府の3場で 7車立て・7R制で11時頃には最終レース発走となる「新モーニング競輪(モーニング7)」が試行実施されました(従来は10又は12レース制で、A12班戦は9車立て)。
試行開催の結果を受けて、2018年4月27日の武雄競輪を皮切りにモーニング7が正式スタートしました。
2019年8~9月に従来より開始時間が25分以上の前倒しとなる「8時30分発走モーニング(830モーニング)」が、広島,武雄,高松,防府の4場で試行実施され、結果を受けて2020年5月01日の広島競輪を皮切りに830モーニングが正式スタートしました。
~ミニコラム~
- モーニング競輪の起源とされる早朝開催「モーニング945」が実施された岸和田競輪ですが、以降2021年12月現在まで岸和田競輪ではモーニング競輪は行なわれていません。
- 過去に1度だけ F1(S級戦)のモーニング競輪が、2016年10月に高知競輪で開催されました。以降2021年12月現在までF1戦のモーニング競輪は行なわれていません。
モーニング競輪の実施競輪場を表1. にまとめました。
2021年12月現在でモーニング競輪が実施された競輪場は24場です。開催累計数が多いベスト3は 1位 広島競輪場,2位 防府競輪場,3位 別府競輪場です。中四国および九州の競輪場で多く開催されています。
表1. モーニング競輪開催場(2021年12月現在)
開始順位 | 競輪場名 | 初開催日 | 累計開催数 |
---|---|---|---|
1 | 岸和田 | 2012.05.04 | 1 |
2 | 高 知 | 2012.11.01 | 21 |
3 | 別 府 | 2012.11.03 | 52 |
4 | 防 府 | 2012.11.05 | 55 |
5 | 豊 橋 | 2012.11.26 | 3 |
6 | 佐世保 | 2013.07.04 | 26 |
7 | 武 雄 | 2014.05.08 | 35 |
8 | 小松島 | 2014.05.24 | 34 |
9 | 熊 本 | 2014.07.11 | 7 |
10 | 宇都宮 | 2015.10.24 | 5 |
11 | 広 島 | 2015.12.09 | 65 |
12 | 伊 東 | 2018.06.15 | 2 |
13 | 高 松 | 2018.07.28 | 19 |
14 | 青 森 | 2019.07.26 | 13 |
15 | 松 阪 | 2019.12.23 | 6 |
16 | 西武園 | 2020.02.22 | 4 |
17 | 大 宮 | 2020.07.15 | 3 |
18 | 小田原 | 2020.08.17 | 15 |
19 | いわき平 | 2020.11.21 | 1 |
20 | 取 手 | 2020.11.28 | 8 |
21 | 立 川 | 2021.02.15 | 2 |
22 | 奈 良 | 2021.08.01 | 2 |
23 | 松 山 | 2021.10.22 | 1 |
24 | 松 戸 | 2021.12.03 | 1 |
~ミニコラム~
- 直近3年(2019~2021年)でモーニングを10回以上開催しているのは、次の8場です。
広島(41回)、防府(28回)、別府(25回)、高松(16回)、小田原(15回)、武雄(14回)、青森(12回)、小松島(12回)
このうち、広島,防府,高松,小松島の4場では、全プロ記念やルーキーシリーズ以外の通常F2戦は全てモーニング競輪として開催されています。(2021年12月現在)
2. モーニング競輪の売上げ
表2. に直近3年のモーニング競輪の売上げを半期毎の推移としてまとめました。
(ここでの「売上げ」は通常車券の発売枚数を当方で集計したものであり、重勝式車券は含んでいません)
2019年は1日平均の売上げは6千万円台だったのですが、コロナ禍でネット売上増となったせいか、2020年からぐんと伸びました。月毎で集計すると2020年4月から1日平均の売上げが1億円を超すようなりました。
表2. モーニング競輪の売上げ推移(重勝式の売上げは含まず)
年・期 | 開催数 | 開催日数 | 1日平均 レース数 | 1日平均売上 (千円) | 1レース平均 売上(千円) |
---|---|---|---|---|---|
2019年前期 | 25 | 75 | 8.2 | 62,164 | 7,544 |
2019年後期 | 22 | 66 | 8.9 | 68,540 | 7,693 |
2020年前期 | 21 | 63 | 8.5 | 96,616 | 11,335 |
2020年後期 | 35 | 105 | 8.0 | 114,079 | 14,209 |
2021年前期 | 46 | 138 | 7.9 | 137,101 | 17,326 |
2021年後期 | 59 | 173 | 7.8 | 159,504 | 20,380 |
※ 2021年後期は2日目以降中止の開催が2度あり 開催日数 ≠ 開催数×3
~ミニコラム~
- 1日の売上げが最初に1億円を超えたのは、2019年6月30日 防府競輪 3日目(12R制) 111,257千円。
- 7レース制で最初に1億円を超えたのは、2019年10月12日 防府競輪 初日(7R制) 126,738千円。
- 1日の売上げが最初に2億円を超えたのは、2020年5月2日 広島競輪 2日目(7R制) 263,125千円。
- 1日の売上げが最初に3億円を超えたのは、2021年8月1日 奈良競輪 初目(12R制) 381,253千円。(2021年12月現在の最高額)
(※ 売上げ額に重勝式は含まれていません)
3. モーニング競輪の配当調査
モーニング競輪の配当について、モーニング競輪以外(他時間帯開催)との比較調査を行ないました。
各クラスとも7車立てレースに限定し、直近3年の2車単車券と3連単車券で調査しました。
表3-1. 配当比較(2019年~2021年分)
クラス・車立て | 開催 時間帯 | レース数 | 2車単配当額 | 3連単配当額 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
中央値 | 平均値 | 中央値 | 平均値 | |||
A12班戦・7車立 | モーニング | 1,937 | 1,030円 | 2,536円 | 4,210円 | 12,274円 |
モーニング以外 | 16,135 | 990円 | 2,502円 | 3,930円 | 12,369円 | |
チャレンジ・7車立 | モーニング | 1,721 | 750円 | 2,425円 | 2,900円 | 11,694円 |
モーニング以外 | 11,766 | 660円 | 2,231円 | 2,700円 | 11,317円 | |
ガールズ・7車立 | モーニング | 259 | 550円 | 2,320円 | 2,180円 | 11,372円 |
モーニング以外 | 3,923 | 540円 | 1,944円 | 2,120円 | 10,501円 |
「A12班戦の3連単の平均値」以外の配当額は全て、若干ですがモーニング競輪のほうが高くなっています。統計的な手法でモーニング競輪とモーニング競輪以外の配当額の比較[1] を行なうと、次の結果が得られました。
- ・A12班戦およびガールズ戦では、2車単・3連単ともモーニングとモーニング以外で配当に差があると言えない。
- ・チャレンジ戦では、2車単・3連単ともモーニングはモーニング以外より配当が高い。
配当に差が見られるチャレンジ戦について、的中車券における「上位人気車券の比率」と「万車券の比率」を集計してみました。(下表)
表3-2. チャレンジレースの的中車券データ
車券種類 | 開催 時間帯 | 配当額 | 上位人気車券比率(車券比率 / 的中平均配当) | 万車券比率 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
中央値 | 平均値 | 1番人気 | 2番人気 | 3番人気 | 4番人気 | 5番人気 | 1万円以上 | 10万以上 | ||
2車単 | モーニング | 750円 | 2,425円 | 29.8% 254円 | 15.6% 462円 | 10.7% 809円 | 6.1% 1,077円 | 4.8% 1,397円 | 5.2% | 0.1% |
モーニング以外 | 660円 | 2,231円 | 31.8% 245円 | 16.6% 472円 | 9.8% 760円 | 7.5% 1,052円 | 5.0% 1,392円 | 4.2% | 0.0% | |
3連単 | モーニング | 2,900円 | 11,694円 | 15.1% 541円 | 8.0% 849円 | 5.5% 1,149円 | 5.6% 1,433円 | 4.4% 1,764円 | 23.9% | 1.7% |
モーニング以外 | 2,700円 | 11,317円 | 14.8% 505円 | 9.2% 788円 | 7.1% 1,128円 | 5.6% 1,432円 | 4.5% 1,739円 | 22.1% | 1.8% |
上位人気車券を見ると、「2車単の3番人気」「3連単の1番人気」以外はモーニング以外のほうが車券比率が高くなります。逆に1万円以上の万車券はモーニングのほうが車券比率が高くなります。
つまりモーニングの的中車券はモーニング以外と比較して、低額の車券比率がやや低く、高額の車券比率がやや高くなっているようです。
チャレンジ戦では配当に差があるという結果となりましたが、
「直近3年において、広島・防府・高松・小松島の4場では、通常のF2戦は全てモーニング競輪として開催されている」
「直近3年のにおけるモーニングのチャレンジレースは、広島・防府・高松・小松島の4場で全体の56%を占める」
となっており、チャレンジ戦の配当に差があるという結果は、もしかするとモーニングの特徴というより、「広島・防府・高松・小松島の4場 対 4場以外の差」が出ているのかも知れません。
モーニング競輪の配当については別の機会にもう少しつっこんで検証してみたいと思います。今回は比較結果だけを示しておきます。
4. モーニング競輪・前回がミッドナイトだったら不利?
現在、競輪は「モーニング」「日中」「ナイター」「ミッドナイト」の4つの時間帯の開催があります。
S級戦は「日中」と「ナイター」でしか実施されないのですが、それ以外のクラスの選手はレースが朝からだったり、夜遅くだったりとまちまちで体調管理が大変そうです。
特に前回が「ミッドナイト」だった場合に、次が「モーニング」となると体調的な面で不利となるのでしょうか?
モーニング出走選手の3日間の成績(平均競走得点)を、前走が「ミッドナイト」だった選手と「ミッドナイト以外」だった選手に2分して比較調査してみました。
- ・モーニング競輪を失格・棄権なしで3日間完走した選手が対象。
表4. 前回ミッドナイトだったか否かの成績比較
クラス | 前回開催 | 選手数 | 平均点 | 偏差値 |
---|---|---|---|---|
A12班戦 | ミッドナイト | 702 | 85.51 | 5.22 |
ミッドナイト以外 | 1,964 | 85.45 | 5.24 | |
チャレンジ | ミッドナイト | 712 | 69.68 | 4.13 |
ミッドナイト以外 | 1,050 | 69.75 | 4.08 | |
ガールズ | ミッドナイト | 125 | 50.25 | 3.93 |
ミッドナイト以外 | 483 | 50.43 | 3.82 |
全クラスとも前回が「ミッドナイト」「ミッドナイト以外」で、ほとんど平均競走得点に差は出てないようです。(A12班戦では逆に前回ミッドナイトだったほうが若干良かったりしています)
統計的な手法で比較[2]を行なった場合でも、前回が「ミッドナイト」「ミッドナイト以外」の2群の平均競走得点に差は無いという結論でした。
調査結果は、「モーニング競輪・前回がミッドナイトであっても不利とはならない!」です。
5. モーニング王・ランキング
モーニング競輪の成績上位者を「モーニング王」として、2021年モーニング王のランキング表を作りました。
A12班戦とチャレンジ戦は前期・後期に分けて、モーニング開催が少なく期毎の級班変更がないガールズは通年で集計し、各ベスト5を表記しました。
順位は優勝回数で判定していますが、同数の場合は勝率の高さで、勝率も同率の場合は競走得点の高さで順位判定しました。
なお同一期内で特別昇班した選手で、チャレンジとA1・2班戦の両方で優勝した選手がいますが(山根将太選手 119期・岡山)、その場合は上位クラスのA1・2班戦でランキング対象としています。表中では ( ) 内にチャレンジ優勝回数を記載し、チャレンジ戦の優勝回数×0.5 を加算して順位付けしています。
- ・優勝回数・勝率・連対率・競走得点は対象期間内のモーニング競輪での成績。
- ・出走開催数は対象期間に出走したモーニング開催数。
- ・級班は対象期間の級班、2022前級班は2022年1月15日現在の級班。
A12班戦2021年前期
順位 | 選手名 | 期 | 府県 | 級班 | 優勝回数 | 出走 開催数 | 勝率 | 連対率 | 競走得点 | 2022前 級班 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 松本 秀之介 | 117 | 熊 本 | A2 | 2 | 3 | 88.9% | 88.9% | 95.77 | S2 |
2 | 土屋 壮登 | 101 | 埼 玉 | A1 | 2 | 2 | 83.3% | 100.0% | 98.00 | S2 |
3 | 大西 貴晃 | 101 | 大 分 | A1 | 2 | 2 | 83.3% | 83.3% | 97.66 | S2 |
4 | 西村 光太 | 96 | 三 重 | A1 | 2 | 2 | 66.7% | 100.0% | 97.16 | S2 |
5 | 日野 博幸 | 103 | 愛 媛 | A1 | 2 | 3 | 33.3% | 66.7% | 95.55 | S2 |
A12班戦2021年後期
順位 | 選手名 | 期 | 府県 | 級班 | 優勝回数 | 出走 開催数 | 勝率 | 連対率 | 競走得点 | 2022前 級班 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 坂本 修一 | 99 | 岡 山 | A1 | 2 | 3 | 55.6% | 77.8% | 95.44 | S2 |
2 | 重倉 高史 | 95 | 富 山 | A1 | 2 | 3 | 44.4% | 66.7% | 95.11 | A1 |
3 | 山根 将太 | 119 | 岡 山 | A2 | 1 (1) | 1 (1) | 100.0% | 100.0% | 96.66 | S2 |
4 | 土生 敦弘 | 117 | 大 阪 | A1 | 1 | 1 | 100.0% | 100.0% | 97.33 | S2 |
5 | 上野 雅彦 | 119 | 香 川 | A2 | 1 | 1 | 100.0% | 100.0% | 96.66 | S2 |
5 | 吉田 有希 | 119 | 茨 城 | A2 | 1 | 1 | 100.0% | 100.0% | 96.66 | S2 |
チャレンジ2021年前期
順位 | 選手名 | 期 | 府県 | 級班 | 優勝回数 | 出走 開催数 | 勝率 | 連対率 | 競走得点 | 2022前 級班 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 長屋 秀明 | 117 | 岐 阜 | A3 | 3 | 3 | 100.0% | 100.0% | 79.66 | A2 |
2 | 島村 匠 | 111 | 福 岡 | A3 | 2 | 5 | 57.1% | 78.6% | 77.69 | A2 |
3 | 山川 奨太 | 117 | 熊 本 | A3 | 2 | 3 | 55.6% | 77.8% | 77.66 | A2 |
4 | 関根 彰人 | 94 | 福 島 | A3 | 2 | 5 | 46.7% | 46.7% | 76.46 | A2 |
5 | 仲野 結音 | 117 | 大 阪 | A3 | 1 | 1 | 100.0% | 100.0% | 80.33 | A2 |
5 | 道場 晃規 | 117 | 静 岡 | A3 | 1 | 1 | 100.0% | 100.0% | 80.33 | S2 |
チャレンジ2021年後期
順位 | 選手名 | 期 | 府県 | 級班 | 優勝回数 | 出走 開催数 | 勝率 | 連対率 | 競走得点 | 2022前 級班 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 林 昌幸 | 119 | 愛 媛 | A3 | 3 | 3 | 100.0% | 100.0% | 79.66 | A2 |
2 | 米嶋 恵介 | 119 | 岡 山 | A3 | 2 | 4 | 83.3% | 91.7% | 79.33 | A3 |
3 | 金田 涼馬 | 119 | 神奈川 | A3 | 2 | 3 | 77.8% | 100.0% | 79.66 | A3 |
4 | 渡口 勝成 | 119 | 山 口 | A3 | 2 | 4 | 58.3% | 75.0% | 77.83 | A2 |
5 | 徳田 匠 | 119 | 京 都 | A3 | 1 | 1 | 100.0% | 100.0% | 80.33 | A3 |
ガールズ2021年
順位 | 選手名 | 期 | 府県 | 級班 | 優勝回数 | 出走 開催数 | 勝率 | 連対率 | 競走得点 | 2022前 級班 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 尾崎 睦 | 108 | 神奈川 | L1 | 2 | 2 | 100.0% | 100.0% | 57.33 | L1 |
2 | 高木 真備 | 106 | 東 京 | L1 | 2 | 3 | 88.9% | 100.0% | 57.11 | L1 |
3 | 山原 さくら | 104 | 高 知 | L1 | 2 | 3 | 88.9% | 88.9% | 56.89 | L1 |
4 | 鈴木 美教 | 112 | 静 岡 | L1 | 2 | 2 | 83.3% | 100.0% | 57.00 | L1 |
5 | 吉岡 詩織 | 116 | 広 島 | L1 | 2 | 3 | 44.4% | 55.6% | 54.89 | L1 |
※ ちなみに女王・児玉碧衣選手は2021年のモーニング出走は1開催のみで、3連勝の完全Vでした。