遠山競輪研究所
スジ車券を徹底分析!( 2019/10/08 )
競輪の基本はスジ車券です。実際S級戦,A12班戦では9割以上のレースで、チャレンジ戦でも約8割のレースで2車単オッズの1番人気はスジ車券となります。
今回はスジ車券について、
「スジ車券/スジ違い車券比率の競輪場ランキング、およびバンクの周長や直線長との関係」
「クラス別のスジ車券比率と、スジ車券比率のライン上の位置別内訳」
「二分戦および三分戦における、第一ライン,第二ラインおよび第三ラインのスジ車券的中率と回収率」
の分析を行いました。
「スジ車券」と「スジ違い車券」の定義と集計対象
ここでは「スジ車券」と「スジ違い車券」について、次のように定義します。
- スジ車券
- Gambooの予想情報のページに記載されている「並び予想」上で前後に並んだ選手を 1,2着とする車券。
例えば「並び予想」が、
← 123 45 6789
であった場合には、1-2、2-1、2-3、3-2、4-5、5-4、6-7、7-6、7-8、8-7、8-9、9-8 をスジ車券とします。
(1-3、3-1 等は同一ラインではあるが、前後の並びでないためスジ車券とはしません。) - スジ違い車券
- 上記以外の車券。
また以下に出てくる表中で過去レースの集計値を示していますが、集計の対象期間・対象レースは次のとおりです。
- 対象期間
- 2016年9月~2019年8月の3年間。
- 対象レース
- 対象期間に実施され、二人以上ゴールして2車単が成立したレースを集計の対象とする。
ただしガールズレースおよびエボリューションレースはラインがないため集計の対象外。
また当日欠場があるレースは「並び予想」とライン構成が違ってくるため集計の対象外。
競輪場別のスジ車券比率
的中車券のスジ車券/スジ違い車券 の比率を競輪場別に集計し、バンク長別にランキング形式で下の表1-1 ~ 表1-3 に並べました。
400バンクでスジ車券比率が最も高いのは直線長が400バンクで最も短い佐世保競輪場(53.29%)、最も低いのは和歌山競輪場(44.69%)でした。
33バンクでスジ車券比率が最も高いのは奈良競輪場(52.66%)、500バンクでスジ車券比率が最も高いのは高知競輪場(46.99%)でした。
全体として直線長が短いほうがスジ車券比率は高いようです。下表1-1で400バンクの直線長とスジ車券比率の相関係数を求めると-0.30 となり、弱めですが負の相関関係が認められます。
表1-4 にバンク長別の平均値を並べました。明らかにバンク長が短いほうがスジ車券比率は高くなります。(全場のバンク長とスジ車券比率の相関係数は-0.60で、直線長との関係より強い相関関係がある。)
注1)対象期間:2016年9月~2019年8月。
注2)対象クラス:S級戦,A12班戦,チャレンジ戦。
表1-1.スジ車券比率の高さランキング
400バンク
順位 | 場名 | 直線長 | レース 数 | 車券比率 | |
---|---|---|---|---|---|
スジ | スジ違い | ||||
1 | 佐世保 | 40.2m | 1,724 | 53.29% | 46.71% |
2 | 青森 | 58.9m | 1,652 | 52.08% | 47.92% |
3 | 松山 | 58.6m | 1,409 | 52.01% | 47.99% |
4 | 西武園 | 47.6m | 1,582 | 51.48% | 48.52% |
5 | 取手 | 54.8m | 1,538 | 49.87% | 50.13% |
6 | 別府 | 59.9m | 1,459 | 49.73% | 50.27% |
7 | 大垣 | 56.0m | 1,656 | 49.58% | 50.42% |
8 | 松阪 | 61.5m | 1,476 | 49.22% | 50.78% |
9 | 川崎 | 58.0m | 1,617 | 49.08% | 50.92% |
10 | 弥彦 | 63.1m | 1,536 | 49.06% | 50.94% |
11 | 小倉 | 56.9m | 3,137 | 49.05% | 50.95% |
12 | 静岡 | 56.4m | 1,488 | 49.00% | 51.00% |
13 | 久留米 | 50.7m | 1,677 | 48.84% | 51.16% |
14 | 広島 | 57.9m | 1,487 | 48.59% | 51.41% |
15 | 玉野 | 47.9m | 1,891 | 48.52% | 51.48% |
16 | 岐阜 | 59.3m | 1,381 | 48.52% | 51.48% |
17 | 豊橋 | 60.3m | 1,328 | 48.43% | 51.57% |
18 | 名古屋 | 58.8m | 1,303 | 48.32% | 51.68% |
19 | 平塚 | 54.2m | 1,408 | 47.84% | 52.16% |
20 | 岸和田 | 56.7m | 1,429 | 47.80% | 52.20% |
21 | 福井 | 52.8m | 1,216 | 47.50% | 52.50% |
22 | 向日町 | 47.3m | 1,262 | 47.35% | 52.65% |
23 | 武雄 | 64.4m | 1,852 | 47.31% | 52.69% |
24 | 函館 | 51.3m | 1,574 | 46.81% | 53.19% |
25 | 小松島 | 55.5m | 1,295 | 46.00% | 54.00% |
26 | 高松 | 54.8m | 1,236 | 45.56% | 54.44% |
27 | 四日市 | 62.4m | 1,594 | 45.55% | 54.45% |
28 | 京王閣 | 51.5m | 1,470 | 45.46% | 54.54% |
29 | 立川 | 58.0m | 1,332 | 45.26% | 54.74% |
30 | いわき平 | 62.7m | 1,396 | 44.86% | 55.14% |
31 | 和歌山 | 59.9m | 1,466 | 44.69% | 55.31% |
表1-2.スジ車券比率の高さランキング
33バンク
順位 | 場名 | 直線長 | レース 数 | 車券比率 | |
---|---|---|---|---|---|
スジ | スジ違い | ||||
1 | 奈良 | 38.0m | 1,895 | 52.66% | 47.34% |
2 | 前橋 | 46.7m | 1,746 | 52.06% | 47.94% |
3 | 伊東 | 46.6m | 1,557 | 51.76% | 48.24% |
4 | 松戸 | 38.2m | 1,479 | 51.65% | 48.35% |
5 | 小田原 | 36.1m | 1,513 | 51.22% | 48.78% |
6 | 防府 | 42.5m | 1,328 | 48.95% | 51.05% |
7 | 富山 | 43.0m | 1,463 | 47.82% | 52.18% |
表1-3.スジ車券比率の高さランキング
500バンク
順位 | 場名 | 直線長 | レース 数 | 車券比率 | |
---|---|---|---|---|---|
スジ | スジ違い | ||||
1 | 高知 | 52.0m | 1,950 | 46.99% | 53.01% |
2 | 宇都宮 | 63.3m | 1,414 | 44.80% | 55.20% |
3 | 千葉 | 60.0m | 779 | 44.69% | 55.31% |
4 | 大宮 | 66.7m | 1,326 | 42.16% | 57.84% |
表1-4.バンク長別の平均値
バンク長 | 直線長 | レース 数 | 車券比率 | |
---|---|---|---|---|
スジ | スジ違い | |||
33バンク計 | 41.6m | 10,981 | 51.01% | 48.99% |
400バンク計 | 56.1m | 47,871 | 48.39% | 51.61% |
500バンク計 | 60.5m | 5,469 | 44.92% | 55.08% |
全場総計 | 54.1m | 64,321 | 48.54% | 51.46% |
クラス別のスジ車券比率
S級戦,A12班戦,チャレンジ戦のクラス別に、バンク長別のスジ車券比率と、スジ車券比率のライン上の位置別内訳を 表2 に集計しました。
どのクラスでも 「33バンク > 400バンク > 500バンク」 の順でスジ車券比率は高いのですが、S級戦ではその傾向は小さいようです。
位置別内訳ではどのクラスでも「ライン先頭→その二番手」の比率が最も高いことが分かります。チャレンジ戦では特にその傾向が強いようです。
「二番手→その前のライン先頭」がその次に高く、スジ車券の中でも「ラインの前二人での決着」がそのほとんどを占めるようです。
注1)対象期間:2016年9月~2019年8月。
注2)表中の「スジ車券比率(全場計)の位置別内訳」の項目説明
先→二: ライン先頭が1着、その後ろの二番手が2着のスジ車券比率
二→先: 二番手が1着、その前のライン先頭が2着のスジ車券比率
二→三: 二番手が1着、その後ろの三番手が2着のスジ車券比率
三→二: 三番手が1着、その前の二番手が2着のスジ車券比率
三番手以降: 1,2着とも三番手以降のスジ車券比率(上述以外のスジ車券)
表2.クラス別のスジ車券比率
クラス | バンク長別スジ車券比率 | スジ車券比率(全場計)の位置別内訳 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
33バンク | 400バンク | 500バンク | 全場計 | 先→二 | 二→先 | 二→三 | 三→二 | 三番手以降 | |
S級戦 | 49.18% | 47.20% | 46.25% | 47.47% | 23.47% | 16.76% | 5.78% | 1.38% | 0.07% |
A12班戦 | 52.59% | 48.93% | 44.35% | 49.16% | 26.35% | 16.05% | 5.18% | 1.48% | 0.11% |
チャレンジ戦 | 50.19% | 48.78% | 44.55% | 48.64% | 31.77% | 13.04% | 2.93% | 0.79% | 0.10% |
計 | 51.01% | 48.39% | 44.92% | 48.54% | 26.82% | 15.53% | 4.81% | 1.28% | 0.10% |
二分戦および三分戦のスジ車券分析
前出の表2. からスジ車券の中でも、ラインの前二人の表裏「ライン先頭⇔その二番手」で決着する比率が高いことがわかりました。
通常 一つのレースの中には複数のラインが存在します。ここでは、ラインのオッズ人気順によって「第一ライン」,「第二ライン」,「第三ライン」と呼ぶことにします。以下、レース形態として代表的な二分戦および三分戦について、ライン別に「ライン先頭⇔その二番手」のスジ車券を購入し続けた場合の的中率と回収率を調査してみました。
集計は 表1-1 ~ 表1-4 を参考に 競輪場をスジ車券比率が高い「グループA」の競輪場と、低い「グループB」の競輪場に分けて行ないました。「グループA」と「グループB」の内訳については下の 注2) を参照下さい。
注1)対象期間:2016年9月~2019年8月。
注2)競輪場のグループ分け
◆グループA: スジ車券比率が高い競輪場
(33バンク、および表1-1 のスジ比率順位 1位~14位の400バンク)
奈良、前橋、伊東、松戸、小田原、防府、富山、
佐世保、青森、松山、西武園、取手、別府、大垣、松阪、川崎、弥彦、小倉、静岡、久留米、広島
◆グループB: スジ車券比率が低い競輪場
(表1-1 のスジ比率順位 15位以下の400バンク、および500バンク)
玉野、岐阜、豊橋、名古屋、平塚、岸和田、福井、向日町、武雄、
函館、小松島、高松、四日市、京王閣、立川、いわき平、和歌山、
高知、宇都宮、千葉、大宮
注3)二分戦の定義: ライン三車以上のラインが二個あり、他は単騎のみ。
(ただし、2車単オッズの単支持率1位選手が単騎の場合は対象外とする。)
注4)三分戦の定義: ライン二車以上のラインが三個あり、他は単騎のみ。
(ただし、2車単オッズの単支持率1位選手が単騎の場合は対象外とする。)
注5)ラインの区別: 2車単オッズの単支持率1位選手がいるラインを「第一ライン」とする。
二分戦では他を「第二ライン」とし、三分戦では他のうちオッズ単支持率上位の選手がいるほうを「第二ライン」、もう一方を「第三ライン」とする。
注6)スジ車券の種類: 表中の「先→二」は ライン先頭→その番手 の2車単車券、「二→先」は その裏の2車単車券。
対象期間の二分戦レースで各ラインの前二人の2車単車券を購入し続けた場合のシミュレーション結果を 表3-1 に示します。
同様に三分戦レースでのシミュレーション結果を 表3-2 に示します。
表3-1.二分戦のスジ車券シミュレーション
競輪場 グループ | レース 数 | 第一ライン | 第二ライン | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
先→二 | 二→先 | 先→二 | 二→先 | ||||||
的中率 | 回収率 | 的中率 | 回収率 | 的中率 | 回収率 | 的中率 | 回収率 | ||
グループA | 3,733 | 25.10% | 90.73% | 11.73% | 66.08% | 6.43% | 98.84% | 4.88% | 80.25% |
グループB | 3,367 | 22.36% | 82.42% | 10.25% | 62.23% | 5.41% | 93.94% | 4.46% | 88.74% |
計 | 7,100 | 23.80% | 86.79% | 11.03% | 64.26% | 5.94% | 96.52% | 4.68% | 84.28% |
表3-2.三分戦のスジ車券シミュレーション
競輪場 グループ | レース 数 | 第一ライン | 第二ライン | 第三ライン | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
先→二 | 二→先 | 先→二 | 二→先 | 先→二 | 二→先 | ||||||||
的中率 | 回収率 | 的中率 | 回収率 | 的中率 | 回収率 | 的中率 | 回収率 | 的中率 | 回収率 | 的中率 | 回収率 | ||
グループA | 19,897 | 19.83% | 83.87% | 10.51% | 68.31% | 6.56% | 95.82% | 4.29% | 75.35% | 2.65% | 92.24% | 1.77% | 65.55% |
グループB | 19,229 | 17.42% | 79.39% | 10.02% | 65.12% | 5.62% | 89.62% | 4.17% | 77.42% | 2.29% | 75.26% | 1.62% | 63.33% |
計 | 39,126 | 18.65% | 81.67% | 10.27% | 66.74% | 6.10% | 92.77% | 4.23% | 76.37% | 2.47% | 83.89% | 1.70% | 64.46% |
競輪の還元率は75%ですから、上表で回収率が75%を超えている部分は人気以上に的中率が高く、回収率的に有利な車券と言えます。回収率が特に高く 90%を超える部分については背景色をピンクにしました。
スジの表車券「ライン先頭→その二番手」は全体的に回収率が高いのですが、二分戦,三分戦とも特に第二ラインの「ライン先頭→その二番手」は相当有利な車券です。
また競輪場のグループ比較では、やはりスジ車券比率が高い「グループA」のほうが全体的にスジ車券の回収率は高くなります。
もちろん これらのデータは過去レースのシミュレーション結果であり、将来も確実に同様な回収率を得られるという訳ではありませんが、今後の車券検討の参考にしていただければ幸いです。