2018年10月にGambooコラムに3回シリーズで投稿した「同着レースの発生率減少について原因を調べてみた。」を 分析記事として再編集しました。
車券検討に役立つ内容ではないのですが、閑話としてお読みいただければ幸いです。
競輪分析で過去レースを集計していると、1着、2着 及び3着の同着レースは例外処理が必要となってちょっと面倒です。
ところが、昔に比べると最近は同着が少なくなったように感じるのです。
ここ10年の1着、2着 及び3着の同着発生率を調べてみました。
(次表の同着数は1着、2着、3着に同着が発生した回数で、発生率は同年レース数に対する割合)
年 |
---|
2008年 |
2009年 |
2010年 |
2011年 |
2012年 |
2013年 |
2014年 |
2015年 |
2016年 |
2017年 |
2018年(注) |
レース数 | 同着数 | 発生率 |
---|---|---|
30,280 | 400 | 1.32% |
32,404 | 431 | 1.33% |
31,815 | 392 | 1.23% |
28,169 | 355 | 1.26% |
28,329 | 325 | 1.15% |
26,935 | 284 | 1.05% |
24,584 | 249 | 1.01% |
23,223 | 259 | 1.12% |
22,471 | 230 | 1.02% |
22,495 | 189 | 0.84% |
14,997 | 131 | 0.87% |
(注) 2018年は 1月~8月の集計。
2008年は 1.32%だった同着レース発生率が、2018年には 0.87%となり、ここ10年間で3割強も減少しています。
また同着レースでも、「3人同着」とか「1着が同着で3着も同着」等の複雑なケースも2012年以前は年に複数回あったのですが、2013年以降は1件も発生していません。
同着レースが減少傾向にあるのは、
「判定写真の解像度がアップして、微妙な着差が判断できるようになったことが原因ではないか?」
と思っていました。
そうなると従来なら同着と判断されていたレースが「微差」や「タイヤ差」と判断されて、同着数が減った分「微差」や「タイヤ差」の数が増えているはずです。
ここ10年の 1-2着、2-3着、3-4着間の着差における「微差」「タイヤ差」の割合の推移を調べてみたのですが…、
(下表で着差数は1-2着、2-3着、3-4着間の数。 微差率、タイヤ差率は着差数に対する割合)
年 |
---|
2008年 |
2009年 |
2010年 |
2011年 |
2012年 |
2013年 |
2014年 |
2015年 |
2016年 |
2017年 |
2018年(注) |
着差数 | 微差数(率) | タイヤ差数(率) |
---|---|---|
90,917 | 1,209 (1.33%) | 2,336 (2.57%) |
97,250 | 1,336 (1.37%) | 2,423 (2.49%) |
95,492 | 1,305 (1.37%) | 2,338 (2.45%) |
84,529 | 1,068 (1.26%) | 1,937 (2.29%) |
85,003 | 1,027 (1.21%) | 1,967 (2.31%) |
80,839 | 1,008 (1.25%) | 1,854 (2.29%) |
73,771 | 930 (1.26%) | 1,677 (2.27%) |
69,664 | 854 (1.23%) | 1,496 (2.15%) |
67,418 | 790 (1.17%) | 1,418 (2.10%) |
67,474 | 902 (1.38%) | 1,371 (2.03%) |
44,995 | 545 (1.21%) | 852 (1.89%) |
(注) 2018年は 1月~8月の集計。
着差における「微差・タイヤ差」の割合が増えているかというと…、逆に減っている感がある。
となると、なぜ同着レースが減ったのか? 判定写真の解像度は関係なく、単にゴール前で接戦となるケースが減ったということでしょうか?
同着レース減少の真の原因を解明するために、まずは 車立て数と同着レース発生率の関係について調べてみました。
年 |
---|
2008年 |
2009年 |
2010年 |
2011年 |
2012年 |
2013年 |
2014年 |
2015年 |
2016年 |
2017年 |
2018年(注) |
計 |
9車立て(8車立て含む) | 7車立て(6車・5車立て含む) | ||||
---|---|---|---|---|---|
レース数 | 同着数 | 発生率 | レース数 | 同着数 | 発生率 |
30,247 | 400 | 1.32% | 33 | 0 | 0.00% |
32,326 | 430 | 1.33% | 78 | 1 | 1.23% |
31,779 | 392 | 1.23% | 36 | 0 | 0.00% |
27,932 | 352 | 1.26% | 237 | 3 | 1.27% |
20,645 | 262 | 1.27% | 7,684 | 63 | 0.82% |
19,000 | 225 | 1.18% | 7,935 | 59 | 0.74% |
17,211 | 190 | 1.10% | 7,373 | 59 | 0.80% |
15,972 | 200 | 1.25% | 7,251 | 59 | 0.81% |
15,168 | 164 | 1.08% | 7,303 | 66 | 0.90% |
14,889 | 143 | 0.96% | 7,606 | 46 | 0.60% |
9,360 | 91 | 0.97% | 5,637 | 40 | 0.71% |
234,529 | 2,849 | 1.22% | 51,173 | 396 | 0.77% |
(注) 2018年は 1月~8月の集計。
やはり車数が少ない7車立てのほうが、9車立てより同着レースの発生率は低くなります。
2011年はミッドナイト(7車立て)が開始されました。
2012年からはチャレンジ戦が7車立てとなりました。また、ガールズケイリン(7車立て)も開始されました。
よって2012年から7車立てレース数が一気に増えて、全体としてそれ以前より同着レース率が低くなったことは当然と言えます。
しかし9車立てにおいても同着レースは年々減少してきているし、ここ10年で3割強も減少した主な原因はこちら側にあるようです。
う~ん、何故なんでしょう?
ちなみに、バンク長と同着レース発生率の関係は次のようになります。
ここ10年の同着率減少の具合にバンク長別の差異はなかったので、10年間の合算値だけを記します。
◇対象期間: 2008年1月 ~ 2018年8月
◇対象レース: 期間中の全成立レース 285,702 R
333バンク(注) |
400バンク |
500バンク |
計 |
レース数 | 同着数 | 同着発生率 |
---|---|---|
45,134 | 408 | 0.90% |
210,286 | 2,428 | 1.15% |
30,282 | 409 | 1.35% |
285,702 | 3,245 | 1.14% |
(注) 前橋335含む
長走路ほど同着レースの発生率は高くなります。
ここ10年で333バンクの廃止は無かったのに対し 500バンクは、大津びわこ(2011年3月に廃止)、熊本(2018年4月から休止)、千葉(2017年12月から休止)の3場が廃止・休止になっており、これも同着率減少の一因ではありますが、その寄与度はとても小さいです。
次に、「S級戦」「A1・2班戦」「チャレンジ戦」「ガールズ戦」のクラス別に同着レース発生率の推移を調べてみました。
年 |
---|
2008年 |
2009年 |
2010年 |
2011年(注1) |
2012年 |
2013年 |
2014年 |
2015年 |
2016年 |
2017年 |
2018年(注2) |
計 |
S級戦 | A1・2班戦 | チャレンジ戦 | ガールズ戦 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Race数 | 同着率 | Race数 | 同着率 | Race数 | 同着率 | Race数 | 同着率 |
7,274 | 1.72% | 15,631 | 1.35% | 7,375 | 0.87% | - | - |
7,791 | 1.46% | 16,672 | 1.33% | 7,941 | 1.21% | - | - |
7,729 | 1.37% | 16,361 | 1.38% | 7,725 | 0.78% | - | - |
6,890 | 1.61% | 14,497 | 1.32% | 6,782 | 0.78% | - | - |
6,917 | 1.39% | 14,040 | 1.22% | 7,233 | 0.80% | 139 | 0.00% |
6,359 | 1.26% | 12,890 | 1.16% | 7,222 | 0.75% | 464 | 0.22% |
6,430 | 1.01% | 11,430 | 1.17% | 6,005 | 0.78% | 719 | 0.42% |
6,189 | 1.15% | 10,696 | 1.31% | 5,505 | 0.82% | 833 | 0.36% |
6,164 | 1.18% | 10,272 | 1.03% | 5,062 | 0.97% | 973 | 0.21% |
6,295 | 1.11% | 9,998 | 0.80% | 5,079 | 0.69% | 1,123 | 0.36% |
4,114 | 0.95% | 6,622 | 0.94% | 3,470 | 0.78% | 791 | 0.38% |
72,152 | 1.32% | 139,109 | 1.22% | 69,399 | 0.85% | 5,042 | 0.32% |
(注1) チャレンジ戦の2011年以前は9車立て。
(注2) 2018年は 1~8月分の集計。
チャレンジ戦とガールズ戦において発生率の変化は見られないのですが、S級戦とA級1・2班戦においては 発生率がかなり減少してきています。
クラス別に、ここ10年の1着2着の決まり手比率の変化を見てみます。
◇クラス別 決まり手比率の推移(単位:% )
年 |
---|
2008年 |
2009年 |
2010年 |
2011年 |
2012年 |
2013年 |
2014年 |
2015年 |
2016年 |
2017年 |
2018年(注) |
計 |
S級戦 | A1・2班級戦 | チャレンジ戦 | ガールズ戦 | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
逃 | 捲 | 差 | マ | 逃 | 捲 | 差 | マ | 逃 | 捲 | 差 | マ | 逃 | 捲 | 差 | マ |
15.0 | 22.7 | 44.2 | 18.0 | 16.6 | 20.6 | 44.1 | 18.7 | 25.4 | 21.8 | 31.6 | 21.2 | ||||
13.8 | 23.8 | 44.6 | 17.8 | 17.7 | 21.1 | 42.1 | 19.2 | 23.8 | 23.1 | 32.5 | 20.5 | ||||
15.4 | 23.8 | 42.6 | 18.2 | 17.5 | 22.0 | 41.4 | 19.0 | 21.7 | 25.9 | 31.8 | 20.6 | ||||
14.5 | 25.1 | 42.2 | 18.2 | 17.5 | 23.4 | 40.0 | 19.1 | 21.7 | 29.2 | 29.6 | 19.6 | ||||
14.7 | 25.7 | 41.3 | 18.3 | 17.8 | 24.2 | 39.4 | 18.6 | 26.6 | 24.6 | 27.4 | 21.4 | 25.5 | 30.6 | 16.2 | 27.7 |
15.4 | 26.9 | 39.0 | 18.8 | 17.5 | 25.8 | 38.4 | 18.3 | 26.8 | 22.5 | 29.9 | 20.7 | 23.0 | 35.6 | 19.1 | 22.3 |
14.6 | 27.8 | 38.9 | 18.7 | 16.5 | 26.7 | 38.6 | 18.3 | 26.1 | 19.7 | 33.0 | 21.3 | 22.9 | 34.1 | 19.7 | 23.3 |
13.5 | 28.2 | 40.3 | 18.0 | 17.3 | 25.6 | 38.5 | 18.6 | 25.9 | 19.8 | 33.9 | 20.4 | 24.7 | 29.8 | 21.6 | 23.9 |
15.1 | 28.0 | 38.9 | 18.0 | 17.6 | 25.4 | 38.3 | 18.8 | 26.4 | 20.2 | 32.4 | 20.9 | 22.8 | 32.4 | 19.7 | 25.1 |
13.1 | 29.1 | 40.4 | 17.3 | 17.2 | 25.6 | 38.6 | 18.6 | 27.8 | 19.5 | 31.2 | 21.6 | 22.1 | 34.4 | 21.1 | 22.4 |
14.3 | 28.5 | 39.6 | 17.5 | 18.1 | 25.4 | 38.0 | 18.5 | 27.5 | 20.6 | 30.0 | 21.8 | 22.2 | 33.2 | 19.4 | 25.2 |
14.5 | 26.1 | 41.3 | 18.1 | 17.4 | 23.8 | 40.1 | 18.7 | 25.2 | 22.8 | 31.2 | 20.9 | 23.0 | 33.0 | 20.1 | 23.9 |
(注) 2018年は 1月~8月の集計。
この表で注目すべき点は、S級戦とA級1・2班戦の「捲くり」と「差し」の比率の変化です。
ここ10年で「捲くり」の決まり手は徐々に増加してきており、その分「差し」の決まり手が減少しています。
同着レース発生率の変化との相関係数を計算すると、
となります。
S級戦の捲くり比率/差し比率と同着レース発生率の間には強い相関があるし、A1・2班戦の捲くり比率/差し比率と同着レース発生率の間にも相関があります。
1着の決まり手別に 2着との着差を分類してみました。
◇対象期間 : 2008年1月~2018年8月
◇対象クラス: S級戦およびA1・2班戦
◇着差グループの内訳:
※ 着差小グループ --- 同着(着差なし)、微差、タイヤ差、1/8車輪
※ 着差大グループ --- 1/4車輪以上の着差
1着決まり手 |
---|
逃 げ |
捲くり |
差 し |
マーク |
着差数 | 着差小グループ | 着差大グループ |
---|---|---|
53,121 | 4,543 (8.55%) | 48,578 (91.45%) |
86,765 | 4,571 (5.27%) | 82,194 (94.73%) |
127,608 | 14,251 (11.17%) | 113,357 (88.83%) |
163 | 12 (7.36%) | 151 (92.64%) |
この表からわかるように、1着選手が「捲くり」で勝った場合は2着との着差が大きい傾向にあり、「差し」で勝った場合は2着との着差が小さい傾向にあるのです。
(1-2着間で調べましたが、2-3着、3-4着間でも同様の現象がある思われます。)
そうなんです。
★ S級戦およびA1・2班戦では、ここ10年間で 次位選手との着差が大きい捲くりの決まり手が増えて、次位選手との着差が小さい差しの決まり手が減ってきている。
というのが、同着レース減少の主な原因なのです。
前述の「車立て数と同着レース発生率の関係」を調べてわかった
・9車立てレースにおいて同着レース発生率は年々減少してきている。
は9車立てレースはS級戦およびA1・2班戦が主なので当然ですし、「バンク長と同着レース発生率の関係」でわかった
・短走路より長走路のバンクが同着レース発生率は高い。
も、長走路のほうが「捲くり」より「差し」の決まり手が多いというのが要因でしょう。
やっと原因判明!
といっても、これって車券戦術に役立つのか? だから何だと言われればそうなんですが…。