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脇本じゃなくて野原~福井記念競輪

2021/07/10 22:24 閲覧数(816)
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 日本を代表する競輪選手の名を問われて誰に一番の支持が集まるかは中々に読めないが、脇本雄太の名前が五指十指のなかに入るのは確実だろう。したがって福井を代表する選手なら脇本が真っ先となるのだろうが、私個人は福井といえば脇本でもなく市田佳寿浩でもなく断固野原哲也だ(もちろん他にも数多の名前が挙げられる競輪党が居られることは承知しております)。
 以前も記したが、野原と前田義秋(栃木)の仕かけあいを中野浩一(福岡)がひと捲りで高橋健二(愛知)が差した一宮ダービーの映像はVHSのテープ(当時唯一地上波で放映されていた競輪番組『サイクルニッポン』を録画したもの)を消さずに何年間も保管していた(ビデオテープは高価だったから幾度も上書きするのが常だったので所謂永久保存版だ)。
 伊集院静著『夢は枯野を――競輪躁鬱旅行――』の「14 福井」から引く。
 “美味しかったが、少し贅沢な気もした。競輪の旅行で中日に美食を摂ると、いつも結果がよくないからだ。/その席に途中、地元の競輪選手の野原哲也が加わった。野原は北陸ナンバー1の選手である。野原は福井の繁華街の酒場を案内してくれた。野原は二年前に話した時より、随分と大人になっている印象を受けた。今年は成績も良くていい年だった、と話していた。酒の飲みっぷりも豪快だった。/競輪選手は酒を水のように飲む。”(172P後半~173P前半)。以降は伊集院、山口県籍の元選手松本澄雄氏、群馬県籍の当時まだ現役だったT選手の話に転ずるのだが、この掌編には幾度読んでも惹かれてしまう。ここでは割愛するが興味ある方は是非ご一読を――。
 “胃の奥から押し上げるような二日酔いの痙攣がした。/「しかしよく飲んだね。競輪選手と飲んではイケナイ、と決めていたのに、また飲んでしまった。彼らは毎日、汗を出して、スポンジみたいな身体で酒を入れるんだから、こっちがバテるに決まっているのになあ。それにしても昨夜の蟹は美味しかった。寒冷手当にしては、上等すぎたね」”(180P後半~181P前半)。因みに寒冷手当とは北陸の競輪場、寒い福井や富山を走る競輪選手に付いた手当だと文中で説明されている。そのことをスミちゃん(前掲の松本澄雄)から教えられた伊集院はこう記している。“私は寒冷手当という言葉の響きが気に入っていた。その名称には、どこか過酷な労働を強いる人買い人が、弁当に銚子一本付けるから、仕事場へ来るように誘うようなニュアンスを感じた”(164P前半)と。
 特別競輪の出張先に『夢は枯野を――』をよく携帯したものだ。予想紙の仕事に就いてからも、暇だった二十代後半の旅打ち時代も、なぜか福井競輪場とは縁がなかった。
 いつの日か、冬期手当が出るような寒い季節に、福井競輪場を訪れたいものだ。
 【福井競輪場開設71周年記念/不死鳥杯】その一、森田優弥を使える郡司浩平の後ろは斉藤登志信。突然且つ予想とは無関係の話だが、斉藤と稲村成浩のペアが銀メダルを獲った前橋競輪場開催の世界選手権、種目はタンデムのスプリントだが、どちらが前で自転車を漕いでいたのか完全に失念している。二予・準決の斉藤はさすがの捌きだったけど、決勝の位置はいかにも勝負どころで攻められそうな場所におもえる。その二、山口拳矢は実に魅力的な選手であるが、捲りか捲りっぽい強襲劇のピンピンピンは気になる。いい意味で山口は頭か着外という扱いかなぁ……。その三、近畿の並びが古性優作-三谷竜生-松岡健介-村田雅一と判明した時、ふと三谷がグランプリを優勝したレースの並びを想い出した。脇本雄太-三谷-村上義弘-村上博幸。
 ふうむ……、近畿四人結束の番手は三谷にとって僥倖の位置なるか?
 福井記念決勝は二車単の④③と③④を買います。あと⑦④をすこしだけ。


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