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追い風参考記録――あずさの旅打ちじゃァ……

2018/04/21 8:11 閲覧数(614)
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 この京王閣で五十場目だから、一応全部の競輪場を走ったことになるのかな……。と、遠征のベテラン選手がポツリと教えてくれ、俺はおめでとうございますと心から祝したが、相手ははにかみながら、なァに只仕事で廻っただけの話だからと返した。まだ花月園も琵琶湖も甲子園も西宮も一宮も観音寺も門司もあった時代の会話である。
 予想紙の記者にとって昔は出張というと年に数回の特別競輪に限られていたが、近時は全国の記念競輪の取材も常態化し、その数は格段に増えた。次の何処何処出張で全場制覇ですよ。と、嬉し得意げに喋っている後輩に、どうせ会社の金で行く旅だろう・身銭以外のやつは追い風参考記録みたいなもんだ。と、ねじくれる俺はホント嫌な野郎だ。
 半月前、新宿駅構内の鍵のないコインロッカーに四苦八苦して癇癪を起した俺だが、ぎりぎり九番線だか十番線の「あずさ」に間に合った。何十年か前のプラットフォームでギター・ケースを抱えながら「あずさ」を待っている忌野清志郎の写真をふと思い出したりした。♪お見送りのお客様はホームでのお見送りをお願いします。列車が発車するとすぐに俺の斜め左前方の娘がイチゴをむしゃむしゃ食べはじめた。ほどなく車内検札が廻って来、彼女が発するイサワオンセン・ナンジ?キップ……片言の日本語に駅員が丁寧に応対していた。石和温泉には硬軟両方、甘い記憶も悲しい記憶もあるのだがここでは記さない。
 俺にとってはどんな沿線より馴染みの深い中央線の景色を車窓から眺めている。
 他人様には厳しい俺だが、最近は新宿~立川のあずさで旅打ち気分なのだから完全にオワッテルよなあ――。
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