――もう競輪の悪口は云いません。
　――もう競輪のテレビ中継の音量を「消音」にはいたしません。
　――もう舌打ちはしません。
　松阪競輪の松阪牛プレゼント、ニクニク・二九二九キャンペーンに腹が立っても、自ら応募して我慢します。
　な～んて今日はエイプリルフールだ。
　細野晴臣が「はっぴいえんど」の前に組んだバント名は「エイプリルフール」で、英字表記はAPRILでなくAPRYLなのが洒落ていた。アルバムの六曲目はディランのカバー、「プレッジング・マイ・タイム」だ。♪ぼくの時間をきみに誓っているんだよ／きみものりこえてくるはずだとおもうから――。俺は当年五十九、競輪に病みついてからの人生が、競輪を知らなかった人生より二倍近く長くなった。
　――もう競輪に悪態はつきません。
　――シャウトする一生懸命な実況者の揚げ足を取るような発言は慎みます。
　――もう出目には頼りません。
　今日はエイプリルフールでやんす（ケムンパス風に……）。
　♪古いスピーカーから流れてくる／この唄が今も大好きで／ずっと好きでいるってことは／とてもむずかしいはずなのによ／たまらんね／腹が立つくらい／たまらんね／また助けられてる――とシオンが唄うのは「ろくでもない明日にしたくなければ」の一節だ。
　競輪に淫して、競輪に救われて、競輪に幻滅して、だけど競輪に感謝して。