昔の競輪は――の書き出しにおいおい又かよとシラケ鳥が飛ぶのは承知で綴る。
昔の競輪は、強い選手と強い選手が組んで弱い選手を除こうとした。換言すると、強い選手を、ほとんどの場合◎の選手を有利に導く「力学」が働いていた。と述べれば大仰にすぎるかも知れないが、他地区の連携などというラインの区別はなく、いわんや即席ラインなる珍語など存在しない。強い順に並んで走る競輪が懐かしくもある。
S級選手は暗黙の壁を作りA級から昇ろうとする選手の阻止に躍起になった(当時の昇降級は純粋に点数に依る。またその「競走得点」の計算式が精緻でよく出来ていた。最適な比較が叶った)。
昔のS級一班は今のそれとは較べようもない「ブランド」だ。一度手中にしたら死ぬ気で護りたい。「城の上階」に位置するS級一班たちが一丸となり石を落としていた。と表せば又異論も出るだろうが。
いつしか競輪は強い選手を盛り立てるだけのゲームではなくなった。と記せば又々誤読されそうだがあえてそう書く。
一線級のスピードを持つAとBで人気は二分している。Aは自力でBには格下のCという「馬」が居る。C-Bで逃げたがAがあっさり捲り、Aの後ろは千切れた。すかさずBがスイッチして人気両者のマッチレース様相とおもわれたが、完全に第二先行になったCをBは四角附近まで捨てず、二着が一杯だった。無理せず二着のBのお陰でCは九着にならずにすんだ(六七着だったか)。
強い先行屋の後ろが格下の弱い先行屋で強いマーク屋は三番手でいいという。別線に粘られたら一発でドカされそうな数字の選手を番手に敷かれた先頭の境地は如何に。
ま、客は客の思惑と都合で車券を買う。選手は選手の都合と思惑で競走を走る。近寄らなければいけないのは此方側だ。
おいおい前取ってどうするの。
引っ張り役を庇ってなにになる。
いいから踏んじゃえよ――!
己の思惑と都合のみで車券を買ってばかりの男が浴びせる悪罵はいつしか、
Deboree-deb n’ deboree-de-bree-deb
Deboree-deb n’ deboree-de-bree-deb
Deboree-deb n’ deboree-de-bree-deb
Deboree-deb n’ deboree-de-bree-deb
T.Rexが唱える『Debora』の呪文みたいになってゆく。
この先、俺が見事ボケたあかつきには、「そんなとこで下げてんじゃねえよ――!」と、突然わめき周りから浮く――。
それもなんだか楽しそうだなぁ。
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