舗道を歩くジャイアント馬場本人にアンタほんとうにジャイアント馬場かい? 我が業界に伝わる某先輩の逸話は最高だ。
二十数年前、晩秋の小倉には競輪祭、プロレス興行、大相撲巡業が重なった。
夜の街に飲みに出れば力士とプロレスラーに遭遇したものだ。コンビニにジャンボ鶴田が居ると、全速力で走り伝えに来た後輩を忘れないでいる。朝のロイヤルホストでは前方のボックス席が浴衣姿の一団だった。先に立ったレジ前の彼らを俺はこっそり盗み見たが、さすがに手刀・ゴッツァンですではなく、誰かが代表で払っていた。当たり前か。
――アンタら他の店では打たない方がイイよ。明日は定休だと告げた雀荘の親爺が笑いながら諭した。物騒な噂しか聞かない小倉の街だ。関東弁で騒ぐ集団の身を案じたのだろう。一旦はマスターに他店の場所を尋ねた俺達だが、全員ワカリマシタと神妙に頷いた。
あの頃のフォトジェニックなモノクロの小倉が懐かしい。
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