『蟻と恐竜、蟻って恐竜に踏まれても死ななそうじゃないですか。』

11年目の初優勝。

フジテレビの
『グラジオラスの轍』でプロゴルファー岩田寛プロが話した言葉。

その言葉は、大学時代同級生だった宮里優作プロと自分を比較した比喩。

自分は蟻で、宮里は恐竜。

我慢に我慢を重ね、練習の虫、パター日本一と称された寡黙なプロゴルファーが11年目にしてツアー初優勝をした。

その岩田プロを追ったドキュメンタリーが放送されていた。

遅咲きの蟻は、恐竜に踏まれながらも死なずに生きていた。

『無愛想な僕ですけど、これからも宜しくお願いします。』

と言いながら、はにかんだ笑顔を魅せた。

ふと思った。

金子貴志だ。

顔立ちは違うが、はにかんだ笑顔が僕には金子選手に見えた。

遅咲きの競輪選手。

金子貴志選手。

自転車競技の華々しい実績がありながら、中々特別競輪に勝てない時期が続いた金子選手と岩田プロが重なって見えた。

『明日の優勝は金子だ。』

と、何の根拠もなく思った。



深谷知広選手が、シャイニングスター賞の落車により、左鎖骨骨折全治42日間の怪我で欠場した。

三コーナー手前で浅井康太選手と接触しての怪我だった。

昨日の準決勝。
自力の浅井選手が果敢に先行して、金子選手とワンツーを決めた。

近況、追込みの仕事も多くなっている浅井選手の逃げを嬉しく思いながら観ていた。

浅井選手らしい。
と思った。

2011年、浅井選手の初優勝寛仁親王牌を思い出した。

改めてダイジェストを観た。

前々に踏んでいる人に、競輪の神は微笑んでくれる。

2011年のオールスターも同様だった。

前々に果敢に。

結果その年、タイトルを二つ獲った。

二度共、四番車だった。

二度共、後続が揉めた。

二度共、マークは山口幸二さんだった。

その年のGP、山口幸二さんが優勝した。

深谷選手が先行して、番手から浅井選手は果敢に前々に踏んだ。
山口幸二さん二度目のGP制覇に貢献した。

素敵な恩返しの様に思えた。

2012年競輪祭準決勝。
GP出走の賞金ボーダーにもかかわらず、競輪祭に優勝しないとGPに出走出来ない山口幸二さんを決勝に乗せた。
浅井選手は準決勝敗退に終わった。

その年、山口幸二さんは引退した。

そんな、浅井選手を見て来た。


オールスター競輪共同インタビュー

『　（準決勝は）いけるところからいけたらいいかなと思ってましたね。石井（秀治）さんが来た時に、もうたぶん井上さんが行くと思ってたので、その時には先行を考えていきましたね。（シャイニングスター賞で）深谷（知広）君と接触したので、その分まで金子さんの前で頑張ろうというふうには思ったので。調子は普通ですね。ダービーは出れなかったんですけど、しっかりG1で戦えてるなっていうふうには自分のなかではあるんですけど、やっぱり決勝戦まだまだ甘いかなってところがあるので、シビアに走ろうかなと。（決勝は）僕は金子さんの前で頑張ります。自分も優勝狙ってレースをしようかなというには考えているんですけど、あとはタイミングで行きます。』(keirin.jp)より抜粋


何故だろう。

このコメントを見ても揺るがない。

このコメントを遥かに上回る積極性と、気っ風の良さと、男気を魅せ付けると思ってしまう。

松阪記念初日、柴崎淳選手が先行し、浅井選手が番手で横の動きをしながら、残しに残して二着で失格になったが、残した。

結果、柴崎淳選手が二着に繰り上がった。

その時の様に。

『金子さんを勝たせます。深谷の分まで。』

と、責任感が強い男は心では思っていると感じてしまう。

前々に果敢に。

後は、金子選手の縦脚を信じて。



金子選手アタマから

『①ー５ー３４８９』
『①ー２７ー５』
『①ー２７ー３４８９』



で、勝負させて頂きます。


競輪はラインで走るもの。

今日の決勝で改めて実感出来る事を願う。



競輪小僧