★雨の宮杯★

　きのうまで岸和田で第73回が行われていた「高松宮記念杯競輪G1」。
　 特別競輪と呼ばれていたものがG1とグレード付けられた、そのうちのひとつ。昔から毎年梅雨時の6月に開催されるので、古くからついた愛称が「雨の宮杯」

　その正式名称も以前の「高松宮杯競輪」から「高松宮記念杯競輪」と変わったが、だがまだ（今は廃止になってしまった）大津びわこ競輪場・500バンクで開催されていた頃の、かなり昔、もう20年位前の、その決勝戦での出来事のお話です。

その年の決勝戦。結果から先に言うと…断然人気の大本命③武田豊樹が軽快に逃げ、それを人気薄の⑥村本大輔がマーク追走、続いた②内林久徳の態勢で直線からゴールへ③⑥②で決まるかに、なんとゴール寸前⑥村本が③武田を差す大判狂わせ、「三連単⑥③②で10万円強の超大穴車券」となった。

その日。私はいつもの様に自宅のテレビでスピードチャンネルを観ながら電話投票をしていた。
その頃は、今の様にサイトの画面を見ながらPCやスマホで簡単に投票出来るネット投票と違って、電話投票。

　「電話投票」
　
　今ではネット投票しか経験のない若いファンが多いのではないだろうか？。私だって、今はPCかスマホで投票している。
　
　電話投票というのは自動音声の「加入者番号と暗証番号と競輪場番号をどうぞ…◯◯◯◯ですね。よろしければ0を取り消す場合は1をどうぞ…」という、投票内容を繰り返しながら進む音声案内に従って、プッシュホンの#や番号のボタンをピッポッパと押して、ややこしい操作をしなければならないものだ（今もあるが、たぶん操作方式はほぼその当時と同じだろう）。

　当然、押し間違えて最初からやり直すこともよくあることだった。

決勝戦の投票。私の投票は勿論その電話投票。しかし自動音声の「…◯◯◯◯ですね。よろしければ0を取り消す場合は1を…」の明細を聞いたところで、何点かの買い目のうちの勝負目の三連単「③⑥②20枚」を「⑥③②20枚」と間違えて投票してることに私は気がついた。ボタンを押し間違えたのだ。一瞬まだ資金はあるからコレはこのまま投票しちゃって間違えたため未投票の「③⑥②20枚」だけもう一回投票するか？と思ったが、すぐ1を押して、その投票を取り消し、本来の予想した勝負目の③⑥➁20枚など何点かの買い目を改めて投票しました（いつもそうしてましたからね）。

さあレースが始まり大方の予想通り断然人気の大本命③武田-マーク⑥村本-②内林の態勢で直線からゴールへ…

「やった～勝負目の三連単③⑥②20枚・取ったぞ!!!」と思った。この三連単でも配当オッズは4万円台だったと記憶している。

が、しかしゴール寸前⑥村本が詰めより③武田に並んでゴール。

1着はどっちだ？③か?⑥か?。テレビの画面にはゴール前のスロー再生が流れている。今みたいなスーパースロー再生はなく画像も今ほどは鮮明でない古いテレビで再生映像もイマイチハッキリしないが、村本のタイヤが少し先にゴールしてるか？

長く感じた沈黙の後に決定放送が。

　 結果は前述のとおり、なんと三連単⑥③②で10万円強の超大穴車券だ。

勝負車券・三連単③⑥➁が 惜しくも外れて、何とも言えない悔しさを感じていた私は…

「えええ、村本が武田を差すのかよ？⑥③②かよ。コレは無理だよなあ買えないよなあ。③⑥➁でイイじゃないかよ～。⑥③②かよ？　買えないよなあ？　⑥③②かよ？ん？え？ええ?　あああ ギャァーさっき押し間違えて買ってたじゃあないかよ？ええ!!! ああ～、あのまま買ってたら、え、ええっと200？200万円だぜ、ええ。嗚呼あああ～」

惜しくも三連単を外した私の悔しさは、そのことに気がついた瞬間に

　「ああ、あの時押し間違えた⑥③②20枚をそのまま0を押して投票確定してさえいれば…」

　と、押し間違えたからとはいえ、大金を手にする千載一遇のチャンスを逃したという、それはもう何百倍もの大きな悔しさに膨れ上がっていたのでした。

その日から数週間「ああ、あのまま買ってたらなあ、何で取り消しちゃったんだよ」とタラレバをﾌﾞﾂﾌﾞﾂとつぶやく私でした。


　「悔し涙の雨の宮杯」

この時期になると、あの決勝戦、今は引退した優勝者・村本大輔がインタビューで「命」ポーズをして大受けしていたのを懐かしく想い出すと同時に

　「あのまま買ってたらなあ三連単200万円だったんだよな」

　 と毎年必ずあの悔しさが甦るのです。
　
　（完）