準決の先行も決勝の捲りも、まるで狙い澄ましたような、佐藤水菜の仕掛けは、勝つ事だけを念頭に、考えた末のそれに思える。凄いという紋きり言葉はあまり使いたくないけれど、まあエラヅヨである。
ずっと前に読んだ伊坂幸太郎の短編だったかに、天才野球選手の話があった。うろ覚えだから正確には引けないが、打席に立つ度に本塁打だから観客は凄い凄いとなる。だけど毎度ホームランに段々と客は飽き始める。それを察した天才はたまにわざとヒットにおさめるか、凡打も混ぜるのだったか。いや全部打っちゃうのだったかしら。投げても天才だったのかなあ。ともかく毎回毎回の本塁打にとうとう客から野次られる羽目になる。お前じゃ野球が面白くならんと。天才の悲劇というやつかしら。もし話の筋が違っていたらごめんなさい。
しかし競輪は野球とは違う。佐藤水菜がこれからずっと勝ちつづけても野次は来ない。それより勝てば勝つほど更に喝采を博する事になる。
脇本雄太から一点も今は効力無しの競輪界で、佐藤水菜から一点はまさに紅一点である。
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