あの日からもう28年が経とうとしているが私は一生あの時の興奮を忘れることはないだろう。
第35回有馬記念
あの時、確かに中山競馬場は「揺れた」。
17万人が馬券に関係なく1頭の馬の名をコール、中央競馬がギャンブルの枠を脱して有馬記念が「国民的行事」となった瞬間だった。
このようなサイトにお集まりの方々には今更説明するまでもなかろうが、あのオグリキャップが引退レースで奇跡の復活を遂げた伝説のレースである。
オグリは地方の笠松でデビュー、地方出身というのはかつての競馬ブームを牽引したハイセイコーと同じで日本人が好む「田舎から裸一貫で出てきて都会で名をあげる」という立身出世物語に当てはまる。
さらにそれが幾度となくトラブルや不運に泣きながらも挫折を乗り越えてライバル達と数々の名勝負を繰り広げたことで爆発的人気につながった。
特に1989年秋シーズンの過酷なローテーションでの驚異的な走りと翌1990年の有馬記念での復活劇はその人気を伝説へと押し上げた。
当時はまだ三連単・三連複など射幸心を煽るとしてよろしくないとされた時代、馬連すらなく枠連のみの馬券だったがファンは毎週熱い戦いに酔いしれたものだ。
この人気とバブル景気の相乗効果で再び競馬ブームが到来、ハイセイコーが「第1次競馬ブーム」でオグリが「第2次競馬ブーム」と呼ばれることが多いが、オグリの人気やほぼ同じ時期にデビューした武豊騎手の人気は競馬場に多くの女性を呼び込んだという点が決定的に違う。
それまでは競輪やオートなどと大差ないイメージだった競馬のイメージがこれでガラッと変わった。
またJRAのほうもそれに乗っかって大々的にクリーンなイメージを打ち出したことが今の隆盛につながっている。
「ギャンブル」から「レジャー」へ、馬ではオグリ・人では武豊騎手が今の競馬の人気を創り上げたと言っても過言ではない。
なんでも全盛期にはオグリのぬいぐるみの売上がミッキーマウスを上回ったとか…。
そう言えば私の高校の担任の先生(女性)の職員室の机にもオグリのパドックの写真が飾ってあった(笑)。
その大スター・オグリが1990年の秋シーズンは不調にあえいでいた。
前年無謀なローテーションを組んだツケもあったのか、少しずつ歯車が狂い始めて夏に予定していた米国遠征も取りやめになる。
復帰戦となった天皇賞が⑥着で続くジャパンCはなんと⑪着に惨敗、評論家のなかでも「神様」と言われた故・大川慶次郎氏を筆頭に「もう終わった」「引退した方がいい」という声が大勢を占めた。
それでも陣営は引退レースとしてファン投票1位に選ばれていた有馬記念への出走を決断、鞍上は武豊騎手に決定した。
「武豊騎手なら…。」と思った人も多かったはず、実際当時の武豊騎手にはそれだけの勢いがあった。
ちなみに武豊騎手がオグリに乗ったのは安田記念とこのレースの2回だけ、最後に美味しいところを全部持っていってしまったので「お手馬」のようなイメージだがむしろオグリと言えば南井克巳騎手のイメージが強い。
私はと言えばオグリは応援したいものの前2走を見る限りやはり厳しいかという評価、結局狙っていた4枠⑦番のメジロアルダンという馬から人気になっていた3枠⑤番メジロライアンと7枠⑬番ホワイトストーンへ枠連③④と④⑦に2万両ずつブチ込んだ。
レースが近づき17万人の大観衆で場内は異様な雰囲気、レース前に放馬してコースを一周してしまった馬もいた。
さらにいざスタートすると逃げると目されていた馬が出遅れたため異様なスローペースになる。
後半だけのレースで実質マイルぐらいの距離の競馬になり、これが(マイルぐらいの距離が一番強かった)オグリに味方したという見方も多い。
最初は「いい位置にいるなぁ。」ぐらいだったのが「あれっ?」「これならそこそこ頑張るのでは?」に変わる。
そしてなんと4角先頭、もう私は馬券などどうでもよくなっていた。
「オグリ頑張れ!!」
ものすごい歓声が沸き起こり直線は押し切りを図るオグリにメジロライアン・ホワイトストーンが襲いかかり3頭の争い、テレビ実況も興奮気味のなかでなぜか入ってしまった解説の大川氏の(自分の本命のメジロ)「ライアン!」「ライアン!」という音声もまた伝説(笑)で彼も自分の予想に誇りを持つプロだった。
そしてオグリがメジロライアン・ホワイトストーンの追撃を絶ち真っ先にゴール、私はもうあまりの感動に震えていた。
こんなに素敵な物語があるだろうか。
実況は「オグリ1着!オグリ1着!オグリ1着!オグリ1着!右手を上げた武豊!オグリ1着!オグリ1着!見事に引退レース、引退の花道を飾りました!スーパーホースです、オグリキャップです!!」と絶叫、実際に武豊騎手が上げたのは左手だがまあそれはどうでもよろしいか(笑)。
地鳴りのような大歓声からやがて「オグリ!」「オグリ!」の大合唱、「1万人の第九」どころではない「17万人のオグリ」である(笑)。
この時の気持ちをどう表現すればいいだろうか、当時●●歳(自主規制)の私は不覚にも涙してしまった。
後にも先にもレースを見て泣いたなどというのは他種目も含めてこの時だけ、オグリより強い馬はその後たくさん出てきたがオグリを超えるすごい馬は出てきていないと断言していい。
最後に、レースが確定して払い戻しが発表されたが我に返っていた私はここでようやく大事なことに気がついた。
すっかり忘れていたがオグリキャップは4枠⑧番、つまり私の馬券はいわゆる「代用」で枠連③④720円が的中なのである。
やはりオグリは最高だ(笑)!!
ちょうど平成の時代と共に出現したのがオグリキャップ、その平成も終わろうとしていて今年は平成最後の有馬記念となる。
武豊騎手と障害王①オジュウチョウサンとのコンビが注目を集めておりこれをかつてのオグリと重ね合わせて伝説よ再びと期待するファンも多いと思うが、いくらなんでも平地での実績が乏しすぎて強調材料に欠けると見るのでこれは見送りたい。
⑭キセキの逃げならそれなりのペース、人気⑫レイデオロのC・ルメール騎手もキセキの強さは分かっているだけに早めに捕らえにかかるはずでそれなら展開的には追い込み馬の浮上か。
本命は⑧ブラストワンピース、前走菊花賞はそもそも不向きと思われるし度外視して脚をためての一発に期待したい。
相手はレイデオロを本線にうまく立ち回れそうな③モズカッチャン・⑤パフォーマープロミスへ。
馬連・ワイド
⑧=③⑤⑫
以上、久々の自力発動でした(笑)。
ブログ
最近のブログ
- 第1回オールガールズクラシックを終えて 2023/10/05 5:21
- 第1回オールガールズクラシック最終日 2023/10/04 5:08
- 第1回オールガールズクラシック二日目 2023/10/03 6:38
- 第1回オールガールズクラシック初日 2023/10/02 1:04
- 特別寄稿 10年目の君へ 2021/12/27 21:43
1990年12月23日
2018/12/23 6:06 閲覧数(1736)コメント(20)
Kazz
MAXさん、お久しぶりです!そして、やはり期待に違わぬ素晴らしいコラムですね(^^) MAXさんの文章力、構成力には、畏敬の念を感じずには居られません。もう30年近く前の話ですが、鮮明に蘇ってきました。
私はちょうど中学生くらい、何か凄いブームに沸いていたのは、子供ながらに感じていました。引退後辺りから競馬にノメり始め、少し後に知って衝撃的だったのが、平成元年、連闘で挑んだジャパンカップ・・・当時の芝12ハロンの世界レコードホルダー・ホークスターの存在と、それを制して引っ張ったイブンベイが作り出す超絶ハイペースの中、最後の直線でホーリックスと叩き合ったオグリキャップの走り、当時を思えば芝の2400で2分22秒2なんて、もう未来永劫出ないんじゃないかと思ったものでした。それを連闘で、という辺りに、アイドル的な要素と、計り知れない底力を持った馬だったのかな、と思ったものでした。
・・・MAXさんの気持ちのこもったコラムのおかげで、書きたい事は山ほど出てきてしまいましたが、それだけでコラムが一本できてしまいそうなので(笑)、この辺りで。また素敵なコラムをお願いします(^^)
私はちょうど中学生くらい、何か凄いブームに沸いていたのは、子供ながらに感じていました。引退後辺りから競馬にノメり始め、少し後に知って衝撃的だったのが、平成元年、連闘で挑んだジャパンカップ・・・当時の芝12ハロンの世界レコードホルダー・ホークスターの存在と、それを制して引っ張ったイブンベイが作り出す超絶ハイペースの中、最後の直線でホーリックスと叩き合ったオグリキャップの走り、当時を思えば芝の2400で2分22秒2なんて、もう未来永劫出ないんじゃないかと思ったものでした。それを連闘で、という辺りに、アイドル的な要素と、計り知れない底力を持った馬だったのかな、と思ったものでした。
・・・MAXさんの気持ちのこもったコラムのおかげで、書きたい事は山ほど出てきてしまいましたが、それだけでコラムが一本できてしまいそうなので(笑)、この辺りで。また素敵なコラムをお願いします(^^)
MAX
Kazzさん
おはようございます。お久しぶりです。
ありがとうございます。
オグリキャップのことはずっと書きたいと思っていたのですが、昨年までは毎日競輪のコラムを書いていたこともありなかなか並行して手が出せませんでした。
前の週にマイルCSでとても届かないとおもわた位置からバンブーメモリーを差し切って連闘でジャパンCを使って2分22秒2は凄まじかったですね。ついでに枠連も②②の2並びで(笑)。
負けはしましたがベストレースと言っていいでしょう。時計も最近のように作られた速い馬場の恩恵ではなくガチのハイペースで真の大レコードでした。
当時は枠連しかなかったのに毎週熱く、ジャパンCや有馬記念なんかはいったいどれが強いのかと本当にワクワクしたものですが、今やジャパンCなんて外国馬自体ほとんど来ないのが残念です。
このところ体調が思わしくなく以前のようにはいきませんが(笑)、また機会があればよろしくお願いします。Kazzさんの見事なコラムも日々拝見しておりますので。
おはようございます。お久しぶりです。
ありがとうございます。
オグリキャップのことはずっと書きたいと思っていたのですが、昨年までは毎日競輪のコラムを書いていたこともありなかなか並行して手が出せませんでした。
前の週にマイルCSでとても届かないとおもわた位置からバンブーメモリーを差し切って連闘でジャパンCを使って2分22秒2は凄まじかったですね。ついでに枠連も②②の2並びで(笑)。
負けはしましたがベストレースと言っていいでしょう。時計も最近のように作られた速い馬場の恩恵ではなくガチのハイペースで真の大レコードでした。
当時は枠連しかなかったのに毎週熱く、ジャパンCや有馬記念なんかはいったいどれが強いのかと本当にワクワクしたものですが、今やジャパンCなんて外国馬自体ほとんど来ないのが残念です。
このところ体調が思わしくなく以前のようにはいきませんが(笑)、また機会があればよろしくお願いします。Kazzさんの見事なコラムも日々拝見しておりますので。
もっと見る
閉じる
※コメント投稿後は編集・削除が行えません。投稿前に内容をよくご確認ください。
※コメントは承認制の場合があります。管理側で内容を確認するため、反映に時間がかかる場合があります。
Gambooでは、人が嫌がるような発言、著作者の許諾のない文章の投稿、公序良俗に反する投稿等を禁止させていただいております。禁止行為が確認された場合、予告なく削除、コミュニティ機能の利用制限、退会等の処理をさせていただくことがありますのであらかじめご了承ください。
コミュニティのご利用ガイドライン
※コメントは承認制の場合があります。管理側で内容を確認するため、反映に時間がかかる場合があります。
Gambooでは、人が嫌がるような発言、著作者の許諾のない文章の投稿、公序良俗に反する投稿等を禁止させていただいております。禁止行為が確認された場合、予告なく削除、コミュニティ機能の利用制限、退会等の処理をさせていただくことがありますのであらかじめご了承ください。
コミュニティのご利用ガイドライン
ブランドン
オグリキャップ、メジロアルダン、メジロライアン、ホワイトストーン 懐かしいなあ。 時の流れを感じます。(笑)