ナマの大谷翔平が見たいから球場へ足を運ぶ。登板日のテレビ中継はかならずチェックする。昔の後楽園球場の七対一で負けている八回裏の巨人の攻撃、長嶋茂雄が凡退でツーアウトになると、ぞろぞろとかなりの人数が客席を立った。大味な負け試合でも長嶋の打席を見てから帰りたい。そんな光景を忘れないでいる。
スピード・チャンネルもインターネットもない時代の話だが、中野浩一が走る開催は観客が一千二千人増しと言われたものだ。
見ようと思えば誰の競走だって視聴可能な便利な時代になったが、毎日日本全国の競輪をすべてチェックするほど、俺は勤勉ではない。
が、この俺にも、皮肉屋のこの俺にも、あの選手のレースだけは見逃したくない、その選手の競輪を愛してやまない、という選手が幾名かいる。
三十年前だったら、その選手を追っかける旅打ちを生き甲斐に日々を過ごしたことだろう。
この選手の車券を買いたい。
この選手の走りを見ずにはいられない。
各々の競輪ファンを傾倒させる選手こそプロ中のプロなのだが、その該当がS級S班であるという保証はないのだ。理解しているかい某よ、某よ、某よ。
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