ガールズケイリン分析2024年 part2(2024/4/25)
ガールズケイリン分析の第2回は、「周回位置」に関する調査・分析を行った。具体的には周回位置について、成績との関係、車番との関係、選手能力との関係を調査し、周回位置による有利・不利さを明確にした。また選手の脚質に注目しながら、個別選手の位置取り調査も行った。
用語について
先に今回の記事の中で使用される用語について説明しておくぞ。
周回位置
周回中(レースが動き出すまでの間)、選手が列の前から何番目に位置していたかを意味するぞ。ガールズケイリンにはラインが無い分、周回中の何番手に位置するかがレースを有利に運ぶ上で重要な要素となるのじゃ。
G指数
遠山氏が独自に算出した選手の強さを示す指標じゃ。平均競走得点と比較し、より精密に選手の強さを評価しているぞ。...まぁ要するにG指数が高いほど強い選手ということじゃ。
詳細はこちらの記事で解説しておるぞ。
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◆調査対象レース
「周回位置と成績の関係」、「周回位置と車番の関係」、「周回位置と選手能力の関係」、「周回位置による有利・不利」、「周回地位と決まり手の関係」については、前回と同様に、過去3年(2021年1月~2023年12月)の7車立てレースを調査対象とした。
最終項目の「個別選手の位置取り」については、なるべく選手の現状を表すために直近2年(2022年3月~2024年2月)の7車立てレースを調査対象とした。
1. 周回位置と成績の関係
周回位置別の勝率・2着率・3着率を集計し、積み上げグラフとしたのが図1である。 オレンジ(2着率)の頂点は連対率となり、緑(3着率)の頂点は3連対率となる。
勝率は4番手位置の選手が最も高く、5番手、3番手が続く。2着率・3着率は2番手位置が最も高く、その前後の3番手・1番手も伸びてくる。その結果、3連対率は2番手が最も高くなり、3番手・4番手、5番手が続く形となる。
勝率に関して、7番手は2.6%でかなり低めじゃな。次に低いのも6番手になっていて後方位置はかなり不利になってしまうようじゃ。
2. 周回位置と車番の関係
図2は周回位置別の車番比率の調査結果を示すグラフである。
勝率が高い4・5・3番手や、2着率・3着率が高い2番手に位置するのは1番車および2番車の比率が高い。逆に勝率が低い7・6番手では7番車および6番車の比率が高い。やはり内枠のほうが良い位置を回れるようだ。
ちなみに1番手の車番比率についてはあまり差が無いみたいじゃが、これはどの車番にいても1番手に(≒Sを取る)選手が一定数いることが原因みたいじゃな。
3. 周回位置と選手能力の関係
ここでは選手能力として、レース内のG指数順位を用いる。7車立てレースでは、選手能力が高い順にG指数順位は1位~7位となる。図3は周回位置別のG指数順位比率の調査結果を示すグラフである。
G指数順位1位選手の比率が高いのは4番手、5番手、3番手であり、これは図1の勝率が高い周回位置と一致する。
またG指数順位2位選手および3位選手とも、周回位置は2番手にいる確率が高い。これは図1で2番手の2着率・3着率が高いのと一致する。
能力のある選手(G指数が高い選手)は周回時に4番手、5番手、3番手を狙うみたいじゃな。
4. 周回位置による有利・不利
さて図1の勝率・2着率・3着率の差は、G指数上位選手が中団に位置しやすいという能力分布の偏りが原因で発生したのだろうか?
これを調べるため、1~7番手位置の選手の能力比率が全て同じとなる補正をしてみた(*1) 。能力分布の差を排除した、純粋な周回位置による有利・不利を示すグラフとなる。
*1) 1~7番手位置すべてで、G指数順位1~7位選手の比率が同じ(100⁄7 %)だった場合に換算して、各周回位置の勝率・2着率・3着率を計算
勝率は4番手位置が一番有利ではあるが、2~5番手の差はほとんどない。2着率・3着率は2番手位置が最も有利なのは確かなようだ。 7番手および6番手が勝率が低いのも確かだが、図1ほどの極端な差はない。
選手能力による位置取りの偏りをなくしても、2番手が2着と3着を取るのに有利で、7番手が1着を取りにくくなる(勝率が低くなる)のは確かなようじゃのぉ
5. 周回位置と決まり手の関係
表1は周回位置別に決まり手比率およびホーム・バック車番率を集計した表である。
表1. 周回位置別の決まり手比率とHome/Back取得率
周回位置 | 1着決まり手(%) | 2着決まり手(%) | H取得率 | B取得率 |
1番手 | 逃げ 39.9捲り 26.5差し 33.6 | 逃げ 29.1捲り 17.4差し 14.4マーク 39.0 | 41.1% | 21.1% |
2番手 | 逃げ 11.7捲り 42.6差し 45.3 | 逃 11.6捲り 27.1差し 17.6マーク 43.6 | 9.8% | 14.7% |
3番手 | 逃げ 17.0捲り 50.2差し 32.8 | 逃げ 12.2捲り 28.0差し 17.2マーク 42.6 | 9.9% | 14.3% |
4番手 | 逃げ 21.2捲り 56.1差し 22.5 | 逃げ 13.9捲り 28.1差し 11.8マーク 46.1 | 10.1% | 18.3% |
5番手 | 逃げ 22.9捲り 57.1差し 20.0 | 逃げ 12.1捲り 24.0差 10.5マーク 53.4 | 10.0% | 17.8% |
6番手 | 逃げ 20.2捲り 51.3差し 28.5 | 逃 8.9捲り 15.2差し 12.0マーク 64.0 | 8.9% | 9.3% |
7番手 | 逃げ 19.4捲り 37.9差し 42.7 | 逃 8.2捲り 14.8差し 12.8マーク 64.2 | 9.1% | 4.6% |
1着決まり手を見ると、勝率が高い4・5・3番手の決まり手は「捲り」が多くを占めている。「中団に位置する能力のある選手が捲って勝つ」というのがガールズケイリンでは一番多いパターンだ。
2着決まり手は「マーク」の比率がもっとも高い。後方位置の選手が2着に入るのは捲る選手の後位に位置して、または好機に捲る選手後位に追い上げてマークするケースが多いようだ。
1着決まり手でも1番手だけは特殊で決まり手の比率は「逃げ」の比率が最も高く、その次は「差し」になっているな。
「逃げタイプ」の選手が先頭に位置してそのままペースよく先行するケースや、 「器用な追込みタイプ」の選手が前受けから自力で駆ける選手後位に飛び付くケースがよくあるパターンじゃな。
6. 個別選手の位置取り
最後に、個別選手の直近2年(2022年3月~2024年2月)の位置取りを調査した結果を示す。調査対象としたのは、2024年2月末時点で現役であり、期間中に20走以上した選手である。
①成績上位選手
まずは、直近2年(2022年3月~2024年2月)のG指数平均値の上位30人の位置取りと、バック取得率および決まり手比率を示す。表の「脚質」は当方(遠山競輪研究所)で判定したオリジナルの選手脚質(*2) である。
*2)ガールズ選手の脚質判定
対象期間(今回は2022.3~2024.2)の「バック取得率」と「決まり手数および比率」により次の7種類の脚質に判定。
「逃げ」「逃捲」「捲逃」「捲り」「捲追」「追捲」「追込」
佐藤水菜選手や児玉碧衣選手を代表に、成績上位選手は3~5番手の中団に位置して「捲り」を主戦法とする選手が多いことがわかる。追込みタイプの石井寛子選手や小林莉子選手は前方に位置することも多いようだ。
表2. G指数上位選手の位置取り比率
選手名 | 期 | G指数 順位 | 周回位置比率(%) | バック 取得率 | 決まり手比率 (1・2着合算の比率) | 脚質 |
佐藤 水菜 | 114 | 1 | 1番手 10%3番手 13%4番手 20%5番手 31%6番手 23% 3 | 46.2% | 逃げ 19%捲り 73%差 8 | 捲逃 |
児玉 碧衣 | 108 | 2 | 3番手 11%4番手 32%5番手 37%6番手 17% | 50.7% | 逃げ 15%捲り 83% | 捲逃 |
柳原 真緒 | 114 | 3 | [1] 52番 7%3番手 13%4番手 29%5番手 35%6番 10% | 34.2% | 逃げ 23%捲り 58%差し 17% | 捲逃 |
太田 りゆ | 112 | 4 | 3[2] 53番手 11%4番手 21%5番手 37%6番手 18%[7] 5 | 42.1% | 逃 10捲り 80%マ 7 | 捲り |
小林 優香 | 106 | 5 | [2] 6%3番手 13%4番手 30%5番手 33%6番手 14% 3 | 20.4% | 4捲り 81%差し 13% | 捲り |
石井 寛子 | 104 | 6 | 1番手 15%2番手 37%3番手 16%4番手 12%5番 9%6番 8% 3 | 12.2% | 逃 6捲り 38%差し 51% 5 | 追捲 |
尾方 真生 | 118 | 7 | 1番手 14%2番手 16%3番手 23%4番手 25%5番手 16%[6] 5 | 43.5% | 逃げ 26%捲り 60%差し 13% | 捲逃 |
山原 さくら | 104 | 8 | 1番手 12%2番 10%3番手 13%4番手 30%5番手 27%6番 7% | 55.6% | 逃げ 22%捲り 70%差 7 | 捲逃 |
坂口 楓華 | 112 | 9 | 33番手 17%4番手 30%5番手 30%6番手 13%[7] 6% | 55.7% | 逃げ 21%捲り 72% 5 | 捲逃 |
梅川 風子 | 112 | 10 | 1番手 10%[2] 53番手 16%4番手 28%5番手 16%6番手 21%[7] 5 | 56.4% | 逃げ 17%捲り 73%差 7 | 捲逃 |
小林 莉子 | 102 | 11 | 2番手 24%3番手 25%4番手 19%5番手 14%6番手 14% | 8.1% | 捲り 25%差し 56%マーク 18% | 追捲 |
吉川 美穂 | 120 | 12 | 1番 9%2番手 27%3番手 28%4番手 15%5番手 13%[7] 6% | 8.0% | 捲り 50%差し 36%マ 11 | 捲追 |
久米 詩 | 116 | 13 | 1番手 13%2番手 26%3番手 14%4番手 14%5番手 14%6番手 16% 3 | 45.2% | 逃げ 30%捲り 48%差し 17% 5 | 逃捲 |
尾崎 睦 | 108 | 14 | 2番 10%3番手 27%4番手 30%5番手 21%6番 7% 3 | 42.8% | 逃げ 21%捲り 63%差 11 5 | 捲逃 |
鈴木 美教 | 112 | 15 | 1番手 13%2番手 11%3番手 12%4番手 20%5番手 23%6番手 17% 4 | 39.9% | 逃げ 30%捲り 35%差し 29%マ 6 | 逃捲 |
奥井 迪 | 106 | 16 | 1番手 21%2番 10%3番手 11%4番手 22%5番手 27%6番 9% | 76.8% | 逃げ 58%捲り 39% | 逃げ |
大久保 花梨 | 112 | 17 | 42番手 20%3番手 23%4番手 23%5番手 18%6番 10% | 31.2% | 逃 7捲り 59%差し 19%マー 15% | 捲り |
荒牧 聖未 | 102 | 18 | 1番手 12%2番手 18%3番手 27%4番手 20%5番 9%[6] 6%7番 8% | 13.2% | 逃 6捲り 38%差し 43%マー 13% | 追捲 |
太田 美穂 | 112 | 19 | 1番手 10%2番 7%3番手 16%4番手 24%5番手 29%6番手 14% | 56.5% | 逃げ 43%捲り 50% 4 | 逃捲 |
吉村 早耶香 | 112 | 20 | 1番手 12%2番手 18%3番手 19%4番手 17%5番手 22%6番 10% | 33.1% | 逃げ 28%捲り 53%差 6マー 13% | 捲逃 |
日野 未来 | 114 | 21 | 1番手 20%2番手 16%3番手 24%4番手 16%5番 10%6番 9%[7] 5 | 44.6% | 逃げ 26%捲り 50%差し 17%マ 7 | 捲逃 |
吉岡 詩織 | 116 | 22 | 1番手 13%2番手 14%3番手 18%4番手 23%5番手 22%[6] 6% 4 | 56.4% | 逃げ 36%捲り 55%差 6 | 逃捲 |
竹野 百香 | 124 | 23 | 1番手 49%2番手 17%3番 9%4番 7%5番 7% 47番 7% | 59.3% | 逃げ 59%捲り 38% | 逃げ |
藤田 まりあ | 116 | 24 | 2番手 15%3番手 25%4番手 25%5番手 13%6番手 14%7番 7% | 22.0% | 逃 6捲り 51%差し 36%マ 7 | 捲差 |
鈴木 奈央 | 110 | 25 | 42番手 30%3番手 29%4番手 19%5番 7%6番 9% | 12.1% | 逃 6捲り 33%差し 40%マーク 21% | 追捲 |
那須 萌美 | 114 | 26 | 32番 10%3番手 15%4番手 21%5番手 20%6番手 20%7番手 11% | 2.4% | 捲 10差し 31%マーク 59% | 追込 |
細田 愛未 | 108 | 27 | 2番手 20%3番手 28%4番手 15%5番手 15%6番手 11%7番 9% | 18.7% | 逃 10捲り 38%差し 37%マー 15% | 追捲 |
石井貴子(千) | 106 | 28 | 32番手 12%3番手 23%4番手 21%5番手 17%6番手 12%7番手 12% | 16.4% | 逃 7捲り 31%差し 38%マーク 24% | 追捲 |
野口 諭実可 | 102 | 29 | 1番手 23%2番手 16%3番手 11%4番手 13%5番 10%6番手 15%7番手 12% | 12.8% | 逃 10捲り 35%差し 23%マーク 32% | 追捲 |
松井 優佳 | 124 | 30 | 1番手 19%2番手 12%3番手 24%4番手 23%5番 10%6番 7%[7] 5 | 41.4% | 逃げ 22%捲り 56%差 9マー 13% | 捲逃 |
「逃げ」を主戦法として30位以内は奥井迪選手と竹野百香選手の二人だけだったぞ。番手の援護がないガールズケイリンで、上位戦では「逃げ」はとても不利な戦法じゃ。二人は順位以上の能力がありそうじゃのぉ。
追込みにこだわって30位以内は那須萌美選手じゃ。メンバー次第で臨機応変に位置取りするが、逃がされる可能性がある1番手に位置することはほとんどないみたいじゃ。
②位置取りに特徴ある選手
位置取りに特徴のある選手として、特定の位置に40%以上の比率がある選手を表記した。
【小坂知子選手】
ほとんどのレースで1番手で前受けする。決まり手比率からもわかるように、前受けから好位に飛び付くのが得意な選手だ。
【刈込奈那選手】【石井貴子(東京)選手】
1番手に位置することが70%を超えるが、彼女らは先頭位置のまま先行態勢に入る。先行一車であれば、点数上位選手が相手でもペースよく駆けて押し切るケースが多々ある。
【岡村育子選手】
ガールズ1期生のベテラン選手。6・7番手を合わせると70%近くになるが、初手は後方でも周回中に内が空けばすかさずインを突いて前々に進んで行くことが出来る。実際に後方位置にいても、中団・前方に位置した時との成績差はあまりない。
【木下宙選手】
昨年デビューした新人。初手は7番手位置が40%を超えて、G指数順位は全体の146位となっている。だがこの選手は5番手内に位置した時の成績はそれほど悪くなく、今後位置取りが上手くなれば成績は上がっていくだろう。
表3. 位置取りに特徴ある選手
選手名 | 期 | G指数 順位 | 周回位置比率(%) | バック 取得率 | 決まり手比率 (1・2着合算の比率) | 脚質 |
小坂 知子 | 104 | 79 | 1番手 84%[2] 6% 3 3 | 12.4% | 逃げ 12捲 7差し 37%マーク 44% | 追込 |
刈込 奈那 | 120 | 138 | 1番手 77% 36番 7%7番 7% | 50.9% | 逃げ 100% | 逃げ |
石井貴子(東) | 104 | 41 | 1番手 71%2番手 11%[3] 5[4] 5 4 | 68.9% | 逃げ 79%捲り 18% | 逃げ |
五味田 奈穂 | 124 | 97 | 1番手 62%2番 8% 4 45番 9%6番 9% 4 | 32.1% | 逃げ 62%捲り 15%差 8マー 15% | 逃げ |
中西 叶美 | 112 | 113 | 1番手 60%2番手 17%[3] 5 37番手 12% | 4.7% | 逃 7差し 29%マーク 64% | 追込 |
加瀬 加奈子 | 102 | 52 | 1番手 55%2番手 12%3番 9%4番 8%[5] 6%6番 7% 3 | 46.4% | 逃げ 48%捲り 27%差し 17%マ 8 | 逃捲 |
宇野 紅音 | 124 | 82 | 1番手 50%2番 7%[3] 54番手 14%5番手 12% 37番 9% | 1.7% | 捲り 25%差し 25%マーク 50% | 追捲 |
竹野 百香 | 124 | 23 | 1番手 49%2番手 17%3番 9%4番 7%5番 7% 47番 7% | 59.3% | 逃げ 59%捲り 38% | 逃げ |
篠崎 新純 | 102 | 51 | 1番手 41%2番手 31%3番手 12%4番 7% 3 4 | 16.3% | 捲り 20%差し 33%マーク 44% | 追込 |
藤原 春陽 | 122 | 71 | 1番手 41%2番手 19%3番手 11%4番 7%5番手 11% 47番 7% | 8.0% | 逃 6捲り 25%差し 35%マーク 35% | 追捲 |
岡村 育子 | 102 | 180 | [3] 54番手 12%5番手 12%6番手 41%7番手 27% | 0.0% | 捲り 50%差し 50% | 追込 |
木下 宙 | 124 | 146 | 1番手 13% 43番手 12% 45番 10%6番手 15%7番手 42% | 0.0% | 捲り 20%差し 80% | 追込 |
さて今回のお話をまとめるとこんな感じじゃな。
・勝率は4番手が最も高く、5番手3番手と続く。
・2着率・3着率は2番手が最も高い。
・レースの中で最も能力のある選手は3~5番手をよく狙い、2~3番目に能力のある選手は2番手によく位置する。
・ガールズケイリンの展開として、中団(3~5番手)に位置する能力のある選手が捲りで勝利するパターンが多い