競輪における雨天レースの特徴調査(2024/7/5)

梅雨の季節...ということで今回も雨天がテーマです。

公営競技の中で、競輪は競馬やオートレースほど雨の影響を受けないと一般的に考えられています。しかし、実際には雨天レースではどのような特徴が現れるのか、あまり明らかになっていません。今回は晴曇時と雨天時のレースデータを比較し、競輪における雨天レースの特徴を調査しました。

今回は調査の過程で普通レース(FI・FII)とグレードレースで、晴曇時と雨天時の差に違いがあることも判明したので、そこについても説明していくぞ。

◆調査対象レース


調査の対象としたのは、コロナ禍後の現在の7車立てレース中心となった2020年10月~2023年8月のレースデータです。ただし、雨の影響を受けないドーム競輪場(前橋・小倉)で開催されたレースは調査対象から除外しました。なお雨天レースには雪のレースも含まれています。

◆調査方法と結果表記法


晴曇時と雨天時のレースデータで各調査項目を集計し、晴曇時と雨天時の差があるか否かを統計的検定の結果で判定しました。集計値の背景色で判定結果を表現しています。

1. 上がりタイム


上がりタイム平均値
天気バンク長上がりタイム
S級戦A12班戦チャレンジガールズバンク平均(*1) 全平均(*1)
晴曇33バンク9.88秒10.15秒10.31秒10.43秒10.12秒11.90秒
400バンク11.66秒11.99秒12.21秒12.53秒11.98秒
500バンク14.41秒14.82秒15.11秒15.57秒14.83秒
雨天33バンク9.96秒10.19秒10.35秒10.58秒10.18秒11.95秒
400バンク11.70秒12.03秒12.24秒12.67秒12.02秒
500バンク14.51秒14.83秒15.10秒15.65秒14.87秒

*1) バンク平均値および全平均値は、晴曇と雨天のクラス別レース数比の違いを補正する重みを付加した加重平均値です。

全平均で雨天時の上がりタイムは晴曇時より0.05秒遅くなっています。統計的検定でも有意差が確認され、雨の影響によりレースの上がりタイムが遅くなる傾向が見られます。

バンク平均で比較すると、上がりタイムの差は「33バンク > 400バンク > 500バンク」になっておるな。

どうやら周長が長くなると雨の影響は小さくなるみたいじゃ。

2. 平均配当および配当中央値


平均配当および配当中央値
天気車券種類レース車立て全体
5車立て6車立て7車立て8・9車立て(*2)
晴曇2車単1,102円
530円
1,828円
740円
2,510円
900円
3,862円
1,460円
2,507円
900円
3連単3,318円
1,460円
7,436円
2,570円
12,676円
3,640円
27,491円
7,460円
13,080円
3,600円
雨天2車単1,038円
570円
1,982円
750円
2,394円
870円
4,284円
1,605円
2,472円
880円
3連単2,871円
1,510円
8,426円
2,450円
12,030円
3,500円
31,724円
7,910円
13,070円
3,490円

*2) 8車立てはレース数が少なく、安定した値が得られなかったため、9車立てに合算しました。8車立てと9車立てのレース比は、晴曇、雨天ともおおよそ 1:10 です。

7車立てでは、十中八九、雨天になると配当が低くなると言えるようです。

一方で、S級のグレードレースが対象となる8・9車立てでは、雨天になると、逆に配当が高くなる傾向が見られます。

5車立て・6車立ては、対象レース数が少ないため、表の数値は統計的検定では差があると言えないレベルです。

7車立てのレースが多い都合上、全体の結果としては雨天時の平均配当および中央値は晴曇時より若干低くなっておるな。

3. 人気車券と高額配当車券の出現率


FⅠ・FⅡ- 人気車券と高額配当車券の出現率
天気車券種類人気車券(*3)高額配当(*3)
 1番人気 2車単: 上位5%
3連単:上位10%
2車単: 5千円超
3連単: 3万円超
晴天2車単27.44%57.52%11.32%
3連単14.32%49.65%8.63%
雨天2車単28.19%58.35%10.84%
3連単14.17%50.45%8.26%
Grade Race- 人気車券と高額配当車券の出現率
天気車券種類人気車券(*3)高額配当(*3)
 1番人気 2車単: 上位5%
3連単:上位10%
2車単: 5千円超
3連単: 3万円超
晴天2車単22.81%59.71%19.21%
3連単9.07%52.82%19.67%
雨天2車単20.76%59.04%19.35%
3連単6.78%51.13%20.62%

*3)

人気車券:「1番人気」「2車単の上位5%以内 / 3連単の上位10%以内」

高額配当車券:「2車単の配当5,000円以上 / 3連単の配当30,000円以上」

FⅠ・FⅡの普通レースでは、3連単の1番人気出現率は雨天で若干低くなっていますが、基本的には雨天になると人気車券の出現率は高まり、 高額配当車券の出現率は低くなる傾向が見られます。

一方、グレードレースでは、雨天になると人気車券の出現率は低下し、高額配当車券の出現率は若干高まるという、FⅠ・FⅡとは逆の傾向が見られます。

4. 1番人気選手の成績


FⅠ・FⅡ- 1番人気選手の成績
天気1着2着3着4着以下
晴曇51.03%20.03%9.92%19.02%
雨天52.16%18.93%9.92%18.99%
Grade Race- 1番人気選手の成績
天気1着2着3着4着以下
晴曇42.33%20.65%9.96%27.06%
雨天41.59%23.08%9.69%25.64%

FⅠ・FⅡでは、雨天になると1番人気選手の1着率は高くなり、その分2着率が低くなります。統計的な有意差も確認されました。したがって、FⅠ・FⅡでは雨天時には1番人気選手を軸にした車券に重きを置くのは効果的かもしれません。

一方、グレードレースでは、雨天になると1番人気選手の1着率は若干低くなり、2着率が高くなっています。

5. 決まり手比率


FⅠ・FⅡ- 決まり手比率
天気1着決まり手2着決まり手
逃げ捲り差しマーク(*4)逃げ捲り差しマーク
晴曇26.19%28.89%44.83%0.09%19.79%13.61%24.67%41.93%
雨天26.73%29.63%43.52%0.12%19.46%13.37%24.80%42.37%
Grade Race- 決まり手比率
天気1着決まり手2着決まり手
逃げ捲り差しマーク(*4)逃げ捲り差しマーク
晴曇13.50%34.98%51.33%0.19%17.32%18.96%27.91%35.81%
雨天12.91%34.61%52.34%0.14%15.53%21.22%28.35%34.90%

*4) 1着きまり手の「マーク」は、1着でゴールした選手が失格になり、その選手にマークした選手が1着に繰り上がった場合に発生します。

FⅠ・FⅡでは、雨天になると1着決まり手で「逃げ」「捲り」の自力決まり手が増加し、「差し」が減少する傾向が見られます。2着決まり手では、1着の「差し」が減少した分、番手選手がそのまま2着に流れ込む「マーク」の増加が見られるようですが、それ以外ではほとんど晴曇と雨天の差はありません。

一方、グレードレースでは、統計的な差はありませんが、雨天になると1着の「逃げ」「捲り」の自力決まり手が若干減少し、「差し」が若干増加するというFⅠ・FⅡとは逆の傾向が見られます。2着決まり手では、「逃げ」が減少して「捲り」が増加しています。

6. バック取得の有利さ


FⅠ・FⅡ-バック取得選手とその番手選手の1・2着率
天気バック取得選手バック番手選手(*5)
1着率2着率1着率2着率
晴曇33.82%22.38%27.63%28.54%
雨天35.52%22.15%26.98%28.80%
Grade Race-バック取得選手とその番手選手の1・2着率
天気バック取得選手バック番手選手(*5)
1着率2着率1着率2着率
晴曇21.94%21.94%30.75%23.67%
雨天21.37%19.37%29.28%23.77%

*5)表内では、バック取得選手の予想並び上の番手選手を「バック番手選手」と表記しています。実レースの最終バックで番手位置にいた選手という訳ではありません。バック取得選手が単騎の場合は、番手選手は該当なしとなります。

FⅠ・FⅡでは、雨天になるとバック取得選手の1着率が高くなり、統計的な有意差も確認されました。よく「雨だと先行有利」と言われますが、上記の結果も併せると先行だけでなく捲りも含めて「バック取得選手有利」という結果でした。

一方、グレードレースでは、雨天になるとバック取得選手の1着率・2着率は逆にやや低下する傾向が見られます。グレードレースでは「バック取得選手有利」とはならないようです。

番手選手に関してはFI・FII、グレードレース共に1着率が若干低下しておるな。

雨走路だとゴール前での交わしが難しくなるのかもしれんのぉ。

7. 選手の横の動き


FⅠ・FⅡ- 当日競り・飛び付き
天気当日競り・
飛び付き率(*6)
晴曇13.49%
雨天12.99%
Grade Race- 当日競り・飛び付き
天気当日競り・
飛び付き率(*6)
晴曇12.91%
雨天12.39%

*6) 周回中からの競りや、イン粘りや追い上げ等の飛び付きを横の動きとします。今回は雨天となって選手の横の動きが活発になるか否かを調査したいので、前日に決定された競りは調査の対象外としました。つまり、予想並びおよび選手コメント上では競りがなく、当日競りとなったもののみを「当日競り」とし、飛び付きととも「当日競り・飛び付き」としてカウントしました。

FⅠ・FⅡ、グレードレースとも雨天になると「当日競り・飛び付き率」は晴曇時より0.5%程度低下します。雨天になると、選手が横の動きをやや自重する傾向が見られるようです。

8. 落車率と失格率


FⅠ・FⅡ- 落車率と失格率
天気落車率失格率
晴曇3.82%3.18%
雨天3.95%3.17%
Grade Race- 落車率と失格率
天気落車率失格率
晴曇8.49%5.59%
雨天8.55%4.56%

落車率はFⅠ・FⅡ、グレードレースともに雨天時のほうが若干高くはなっていますが、統計的には有意差を認められないレベルです。

失格率は、FⅠ・FⅡでは晴曇と雨天で差がなくグレードレースでは雨天で1%ほど低下しています。

一般的には「雨だと路線が滑って落車しやすくなる」と指摘されるそうじゃが、近年はそうでも無いみたいじゃな。

理由としては、バンクやタイヤの改良、選手の技術力アップ、また昔より選手の横の動きが少なくなったことが考えられそうじゃ。

9. スジ決着率


FⅠ・FⅡ- スジ決着率
天気スジ決着率(*7)
晴曇53.63%
雨天53.37%
Grade Race- スジ決着率
天気スジ決着率(*7)
晴曇51.88%
雨天50.42%

*7)

スジ決着:1着と2着の選手が予想並び上で同ラインでありかつ前後に並んでいる状況

スジ決着率:スジ決着したレースの比率

FⅠ・FⅡでは、雨天になると統計的には認められない程度の若干のスジ決着率の低下が見られました。

グレードレースでは、FI・FIIより大きな差が差が見られました。FⅠ・FⅡよりスピードがあるので雨の影響がより大きいのかも知れません。

本来は横の動きが少なくなればスジ決着率は高くなるのじゃが、雨の影響でバンクが重くなったり視界不良になった結果、ラインが千切れやすくなったのかもしれんのぉ。

◆まとめ


雨天レースの特徴(全グレード共通)

  • 上がりタイムが遅くなる。バンク周長が短くなるほど顕著。

FI・FIIにおける雨天レースの特徴

  • 1番人気選手の勝率が高まり、結果として人気車券での決着が多くなり、配当額が低くなる傾向がある。
  • 自力選手が有利となり、1着決まり手の逃げ、捲りが増加し、追い込み選手の差しが減少する。
  • 選手が横の動きを自重する傾向が見られる。しかしスジ決着率は若干低下する。
  • 落車率は晴曇時より微増する程度。失格率は変わらない。

グレードレースにおける雨天レースの特徴

  • 1番人気選手の勝率は若干低下し、2着率が高くなる傾向がある。結果として人気車券決着が減少し、配当額が高くなる傾向がある。
  • 自力選手が有利とはならず、1着決まり手の比率も晴曇時とそれほど変わらない。
  • 選手が横の動きを自重する傾向が見られる。しかしスジ決着率は低下する。
  • 落車率は晴曇時より微増する程度。失格率は下がる。
    

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