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代用の四番車

2018/02/23 20:57 閲覧数(446)
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 松戸競輪場の第二センターやや三コーナー寄り、コンクリート階段を数段昇り、手すりに両肘を置きながら十数年ぶりにスタンドから野次を飛ばすと、俺の軀は「オイル」が廻ったみたいに熱くなった。
 第九競走に小川巧が六番車で出走していた。枠番時代の話になるが、あれはどこの競輪場だったろう、買った本命の五番車が赤板ぐらいに落車してしまい、俺はヤケクソで「――嘘でもいいから四番捲ってみろ――!」と周りに聞こえる声を発したのだが、その四番が最終バックから本当に捲ってしまったのだ。まさかの「代用」に俺らは大騒ぎ、そのときの四番車が小川巧だった。何かの縁だと俺は冗談で六番の絡みを豆券で買ったが、ま、これがきちゃうほど俺のギャンブルは「漫画」ではない。
 第十競走はA級の決勝戦、菊池竣太朗を使える飯田憲司が◎、二段駆けまでありとも思える番組だったが、結果は派手な「空中戦」の末にナント菊池の優勝、二着も三着も別線で二車単34560円、三連単は229260円の穴となった。俺には買えない車券だが菊池は六番車、入ったのは⑥⑦、五―五のゾロ目でありました。う~ん……。
 ゴール直後の一団がスピードを落し、ゆるゆるバンクを一周するのだが、飯田と菊池が何やら話しながら並走していると、俺の左方から強烈な野次が聞こえた。「笑ってんじゃねえぞ――!」だったか「喋ってんじゃねえぞ――!」だったか。
 三十五六年前の松戸競輪場の混雑を想い起こすのはもうむずかしいが、こんなに「楽」な観戦ではなかったはずだ。ただそれでも、此処に立って競輪を見ていると、一瞬、俺はあの時代にタイムスリップしそうになる。
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