正月三が日の翌晩、こらえ性のない小生の「競輪癇癪」が破裂した。四日市ナイター競輪の第五競走で誘導員早期追い抜きがおこったあたりから苛々しはじめたのだが、といって三着の失格選手を買っていたわけではない。今の競輪の赤板附近はある意味せめぎあいだから、誰かがちょっとでもフライングする、もしくはフライングしそうになると、反応するように他の選手にもおもわぬ動きが発生する。なんたって早期追い抜きによるペナルティは重罪だから、「回避すべき場面」では誰もが急激にバックを踏むことを強いられる？　このレースも因果関係の濃淡は置いたとして、二車単190円の片一方が赤板で落車してしまった。
　一月三日のいわき平の準決あたりからきざしはあった。260円や290円が消えるのも競輪だというのは百も承知だが、その負け方が、菅田壱道（宮城91期）や嵯峨昇喜郎（青森113期）の走り方が、俺には呆れるほどもの足りなかった。
　四日市に戻ると、第六競走から荒れに荒れたのか、適当に荒れたのかは各人の感想に委ねるが、第八競走の渡辺航平（福井79期）がぶっぱなれ田頭寛之（京都109期）が裸逃げになった時点で俺は制御不能になり、テレビにむかってひとり毒舌を吐きはじめた。
　司会のオッズ読みのイントネーションが変だ。左手の女史の役割は解説なのだろうか、それとも。「一着神山雄一郎、二着吉岡稔真、三着尾崎雅彦。払戻金は……」の定番に慣れ親しんでいる俺にとって、「一着神山選手、二着吉岡選手、三着尾崎選手――」と簡略されては違和感しかない。
　テレビ画面に放つ野次将軍は卒業したつもりだったのに、いつまでたっても、還暦をすぎても、寡黙な紳士になれない俺だ。
　♪今日はもうヘトヘトだ／早く帰って眠りたい／少し喋りすぎたし／はしゃぎすぎたし／疲れた――（SIONの『早く帰ろう』から）をもじって唄おうか。♪今日はもうヘトヘトだ／早く帰って眠りたい／少し野次りすぎたし／怒りすぎたし／金もとられた――お粗末。