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人間小唄~競輪界の宝は早すぎる

2021/06/05 20:40 閲覧数(448)
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 別府記念の最終レース、守澤太志(秋田・九六期)がガツンと松浦悠士(広島・九八期)を放りあげ、止めてしまった。やるねぇと私は呟いたが、これ一つでなにかが変わるわけでは毛頭ない。
 豊橋FⅠの決勝は武田豊樹(茨城・八八期)が森田優弥(埼玉・一一三期)に弾かれ、内側に戻ろうとすると今度は、高橋築(東京・一〇九期)にも厳しく当たられ大敗を喫した。
 勝負の世界に悲哀はツキモノだが、武田がズルズル後退してゆく様には一抹の寂しさをおぼえる。
 もう十年は前だろう。有望な若手が各地で名前を売り出し、すわ世代交代と巷が騒がしいわりには、当時のヒエラルキー頂部に居る格上猛者連が簡単に椅子を譲るわけもなく、次代を担うと目された選手が一人、二人と目だたなくなっていった。
 十年がたち、むろん勢力図は激変したが、変えたのは、巷でもてはやされた何某でも誰某でもない、別の選手だ。今のところは。
 半年や一年そこらの活躍で“競輪界の宝”の絶賛句は早すぎる。まだまだこれから壁一つ、二つ――。選手には酷に聞こえるかもしれないが、超一流に烈しく蹴落とされるスター候補を見物するのも、逆に衰えゆくスターを見送るのも、競輪の奥深い興趣である。
 ま、ずうっと強いままのアスリートなど居ない。どんなに足掻いても皆いつかは弱くなる。勝てなくなって、競走得点が底まで下がり、引退を余儀なくされる競輪選手。会社員も自営業も職人もこれ又似たようなもので、最後は「点数」が足りなくなり、場所を去らざるをえなくなる。
 程度や時間の差こそあれ、人間は皆、いつか老いる、いつか弱る、いつか死ぬ。
 ♪諸君、だから競輪なンてものを、飽かずに面白がることが、できるのだ――。(『ナンチャッテ・人間小唄』より)


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