〈山崎賢人-山田英明-中本匠栄-園田匠が逃げており、捲りあげた松浦悠士が中本の外、おなじく新田祐大が四番手附近の外、五番手の吉澤純平も岩本俊介も車をもちだす構えで、ずうっと中バンクを踏みっぱなしの脇本雄太は「エンプティ」状態の最後方だ。〉~正面スタンド側から撮られた最終二角すぎの映像は一目瞭然というか、いつもの慣れ親しんでいる画である。
それがとつぜん、三角附近のカメラが密集団を前から撮る映像にきりかわった。〈最前列は内側から外側にむかって山崎、山田、新田の併走、おなじく二列めが中本、松浦、吉澤、三列めは最内園田で大外に岩本、やや離れた四列めに脇本だが、各選手前後の距離感は計りにくく、加速感もつかみにくい〉~これが最終バックストレッチ。ほんの数秒後、映像はもとのオーソドックスなカメラ・アングルにもどり、さらに数秒をへた四角、山田が新田をおおきくもってゆき、煽りで吉澤が落車した。
――映画でゲージュツをやっちゃいかん、と言ったのは昔の東映の社長だったか。たしなめられたのが誰であったかもおもいだせない(掲載物を処分してしまったようだ。やはり本は売っちゃいかんなァ……)。
――車券を買っているひとむけの映像でゲージュツをやっちゃいかん、と、わたしは言いたくなる。
――客の入らない映画は意味がない、という信念を脚本家・笠原和夫は貫いた、と荒井晴彦が『争議あり』に記している。
伊東競輪の早業のきりかえ映像を奇異に感ずる、というか、かんべんしてくれという気もちが正直なところだ。だけれでも、もし、この映像によって客が入る(歓迎される)のだとしたら、それはそれでいいことなのだろう。
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