京王線の若葉台駅から車で十分ほど、小高い山の芝の下に恩人のТが眠っている。俺の不精を知っているТちゃんだから、京王閣競輪方面ならついでに寄るだろうと計算したのだろうか。さっそく記念競輪にかこつけての墓参だと憎まれ口を放ったが、返事はなかった。
準決のひとつ前にまにあったが第九競走は見、十、十一とやって惜しくもないはずれを喫し、最終は平原康多を打っていいのかどうか迷ってしまい、結局ちょこっとだけ買い見物もせずに競輪場を辞した。懐かしい道を調布駅まで歩く――。頼まれもしない散歩をして草臥れたなどとひとりごと――ボウっとしながら乗った電車は逆方向の「京王八王子駅ゆき」で、特急だったので一気に府中駅までつれていかれた。二十代のころ二年近く、府中の家具屋でバイトしたことがあった。旧甲州街道沿いに家具店、クリーニング店、葬儀社と並ぶ商店街で、近くには大國魂神社、府中競馬場へも歩いて往来できた。一瞬、今の町並みを歩きたい郷愁が起ったが、こんな夕のおもいつきは、おそらくろくなもんにならない。
《京王閣記念ファイナル》千葉-千葉-千葉が逃げなきゃレースははじまらない。慌てることはないぞと周りが諭しても、鼻息荒い根田空史のことだから、オーバー・ペース覚悟の早仕掛けになってしまう? よって平原康多の捲りか郡司浩平の捲りどちらかとするが、「それぞれのマーク」河村雅章や萩原孝之は、「残りの千葉-千葉」中村浩士-和田健太郎とからまる画だ。換言すると平原から「違うとこ」、郡司からも「違うとこ」なのだが、絶対いれたいのは出来抜群の和田である。
最後に単騎の二人の寸評をば――。村上博幸をばっさり切るのは勇気がいるが、「目標のないマーク型」と括ってしまおう。最近の山崎芳仁の「新パターン」は、単純後方から一車二車と内から掬い、そのまま惰力をころさずに捲り強襲というやつ。ここでも似た競走になるかもしれない。
結論――。平原から①⑨②と①⑨⑤。郡司なら②⑨①と②⑨⑤。
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