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落ちぶれた神童

2018/01/23 6:53 閲覧数(1679)
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昭和50年代。
小学生だった私は手前味噌ながら学業成績優秀で、周りから神童と呼ばれていた。
当然、有名中学を受験し合格。
三重の片田舎で誰も見たことのない制服を着て電車通学をしていた。
周りの大人達の「頭いいんだよねぇ。頑張ってねぇ」と判で押したような挨拶にうんざりしていた記憶がある。

そんな私にも平等に反抗期なるものがやってくる。
周りの大人達の視線に反発するかのように、ここでは書けないことに毎日明け暮れていた。

有名中学の制服を着て、世間様に迷惑をかける姿を大人達がどう見ていたか容易に想像できてしまうがそれが楽しくて仕方がなかった。

数年の月日が経ち、時はバブルの真っ只中。
私は高校受験も大学受験も当然のように失敗し、就職もせず立派なフリーターとなっていた。

周りの大人達の視線はいつの間にか神童としてではなく、冷ややかなものに変わり両親ですら私を避けているのか?と思っていた。

そんなある夏の日。
バイトに行こうと玄関を開けると、たまたま隣のオヤジ岩田さんと出くわした。
岩田さんは、「おっ!しばらく見なかったけど就職決まったか?」と聞いたが、返事をしない私を見て気まずそうに察した後、「暇なら一緒に競輪場でも行くか。」と切り出してきた。

普通に考えたらうっとうしいオヤジの誘いだがその時はなぜか断らずバイトのない日に競輪に行くことになった。

初めて踏み入れる四日市競輪場。

今思うと50歳前後のオヤジと20歳のガキが並ぶ姿は違和感満載だっただろう。

現在、無料バスは近鉄四日市駅からしか出ていないが、当時は鈍行しか止まらない競輪場に一番最寄りの霞ヶ浦駅も無料バスの発着場となっていた。
普段は鈍行しか止まらないが、競輪の開催日だけは急行が止まってくれていたが平成も30年となる今、競輪場へ向かう無料バスの姿はなく、急行は当然のように通過してゆく・・・

そうそう、競輪場に向かう途中の近鉄四日市駅で岩田さんに怒られた記憶がある。

駅の売店で予想紙を購入して駅のベンチで予想紙を眺めていると普段は柔和なこなき爺の岩田さんの表情が険しくなった。

「おい!競輪は法律で認められたギャンブルだが世間様はギャンブルをいい目では見ていない。新聞をこんなところで広げるな!世間様の目を気にしろ!」

お前は世間様の目を無視して落ちぶれたのだろう。世間様の目を無視して人生やり直すことなんてできねぇぞ!
岩田さんが競輪に20歳のガキを誘ったのはそんなことを言いたかったからなのか。

急行は霞ヶ浦駅に臨時停車し、無料バスに乗り換えた時、岩田さんは無言で出走表を広げた。
もういいぞ。さっきは悪かったな。そんな声が伝わった気がした。

以後、私は岩田さんの教えをずっと守り続けている。
昨今は、金曜日夕方の通勤電車で競馬新聞を広げている禿頭をよく見かける。
本当にいいのか!そこの禿頭!

天国の岩田さん。
知ってますか?
ちょっと前まで4倍を超えるギアで競輪が行われていたのですよ。
岩田さんが好きだった滝澤正光は競輪学校の校長なんですよ。
滝澤正光のラストは富山記念だったが気持ちがのった先行でしたよ。
もう10年も前の話か・・・

2018年2月。
初めて四日市にG1がやってきます。
最終日決勝・・・
岩田さんのことを想って現地参戦しますね。
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