世の中に映画のリメイク、佳曲のカバーはごまんとあるが、オリジナルのここがミソだろうに何故改変するのかと訝る作品もまた多い。
尺の都合で編集された、ほぼ一周のみの競輪の映像はもの足りなさすぎるが、スローに落した映像、更にコマ送りにして詳しく「解析」されるのも俺は苦手だ。競輪のダイジェスト映像・結果・払戻金は「三種の神器」だとおもっているのはもう少数なのだろうか。このレースは幾らついたのだったっけの楽しみをぶった切られると落ち着かなくなる――。
ジョアン・ジルベルトが逝ってしまった。DVD『LIVE IN TOKYO』のなかで演奏中のジョアンの眼鏡がずり落ちる場面があるのだが、その景を見たさに俺は幾度全編を流しただろう。もともと緩めのフレームが汗等で徐々に滑り気味になってゆく。そんな横道の時間の経過を意識した鑑賞もまた乙である。
ポールのあの曲のジョージのあのギターを聴きたいがためレコード盤に針を落す。あのラストを、あの邂逅のシーンを観たいがために長尺の映像につきあう(名作は得てして退屈であると記したのは誰だったか)。安物のポータブル・レコード・プレイヤー、名画座の固い椅子が懐かしい。
テレビで大リーグのオールスター・ホームラン競走を見ていたら、元選手・解説者の山下大輔さんがレフト・スタンドでグラヴを構えていた。と、何人目かの何本目かの飛球をナイス・キャッチしたのには驚き笑い楽しくなった。本人も企画者も小躍りしたことだろう。番組は一流スラッガーたちのバッティングを、角度を変えた映像、インパクトの瞬間の静止映像、弾道のビジュアル加工、もちろんコマ送り・スロー映像等々をまじえて解析しており、そのどれをも厭かずに見つづけている俺だから、実は食わず嫌いなだけで、競輪のその種の映像も楽しむ要素はあるのだろう、きっと――。
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