小原太樹が新山響平の真横に並んだ時ウンっと声に出さず呟いた俺だが、藤根俊貴はその手も想定済みらしくぜんぜん慌てなかった。
青森記念の決勝は引っ張り役の藤根以外の北五人で一着から五着までを独占、一番と六番の番手捲りは地元ファン万々歳の兄弟ワンツーと、まさに「みちのく劇場」とあいなった。
配当まで待ってすぐにテレビのチャンネルを「BOAT RACE ライブ」に替えた。昔よく一緒に仕事をしたD氏が変わらぬ笑顔で司会をしていた。浜名湖決勝の一号艇に競輪の深谷知広と一字ちがいの深谷知博の名があった。呼ぶならともにフカヤトモヒロである。
立川の決勝もちょっとだけ買っていたので、結果を避けてダイジェスト映像を開き、見終わった俺はちいさく声に出した。「立川も一番六番の番手捲りじゃないか……」と。どちらの車券も丸落ちのくせに、妙なひとり合点に俺は可笑しくなった。そうだ、富山の外国人-外国人のレースも見なければ――。
約三時間半後。“夜には一気に世界が変わり……”の注意喚起テロップが流れるテレビを見るともなく見ながら、この拙文を記している。窓を開けると、雨は降っていないが、蒸しっとした湿度が半端ない――。
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