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Over the Rainbow

2019/08/21 14:42 閲覧数(654)
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 気まぐれの御礼参りの途中、一天にわかにかき曇り、雨が激しくふり出した。マンションや駐車場や商店が一緒になった巨大施設に面する通りは、これまた大きく長い庇で護られていたから、そこかしこ雨宿りの景であった。俺は喧しい音楽が流れていたイヤフォンをはずし、三十分以上雨の音をきいた――。
 明るさがもどり、やがて弱い天気雨となって腰を上げるとほどなく、空高くに大きな虹が現れた。周りの幾人かが立ちどまり、携帯電話で写真に撮っている。♪出た出た虹が――! 声に出さずとも俺の歩のリズムが元気になった。吉兆にちがいない美跳におもい浮かぶは、レインボー宝くじ、競輪はレインボーカップ、競馬にも競艇にも冠レースはありそうだ。無性に麦酒が飲みたくなった。御礼を済ませ、境内を出、繁華街まで、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズを聴きながら足どり軽く歩いた。
 馴染んだ商店街の景色が変わっていた。片側の店舗十個分以上がばかデカい鉄の壁の裏に消えていた。目的の店もマックもスタバも含まれていた。三十をすぎてから移り住んだ土地は、すでに人生で一番長く暮らした町となり、その見慣れた景色がこつ然と消え、ハイな気分がすっ飛んだ。
 ま、よく考えれば、俺の好きなもの懐かしいものだけ残しながら、町が立ちゆくはずもなく、ということは、固陋の俺がしつこく、くどく、こだわり、譲らない競輪だけでは、未来の競輪もまた同様なのだろう、おそらく――。
 虹はとっくに消えてしまっている。
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