皆様、おはようございます。
今日は予想コラムではございません。
・・・なかなか文章に出来ず、もう早くも4日経ってしまいましたが、本日は・・・65年の歴史のエピローグ、船橋オートレース場の本場開催最終日となった2016年3月21日を振り返りながら、Gambooオートレースコラムニストの端くれとして、今の気持ち等をコラムにしたためてみたいと思います。
私が初めて船橋オートを訪れたのは、旅打ちの記録に拠れば、今から約17年前の1999年8月29日。当時はまだ実家のある静岡県内に住んでおり、浜松オートを主戦場としていましたが、少しずつ旅打ちの楽しさに目覚め始めていた頃でした。この4ヶ月前に川口オートへの初踏破を果たしているのですが、それに続いて、夏真っ盛りの船橋に初めて足を踏み入れた事になります。
当時はまだ2連勝式のみ、そしてここ数年は完全に閉鎖されていた山側(バック側)のスタンドも大盛況の頃でした。当時、バックストレッチを上から見られるレース場は船橋だけでしたので、普段とは異なるコースの見え方に、もの珍しさを感じておりました。
そして、締切5分前になると流れ出す、どこか牧歌的な感じの音楽が、船橋オートのイメージとしてずっと頭に焼き付く事になります(今でもそのメロディーを思い出せます)。当時、この音楽を耳にすると、遠路はるばる船橋まで来たなぁ・・・というような感慨にふけっていました。
それからしばらくは、車券相性の良い川口に対して、船橋では殆ど車券で良い思いが出来ず、かなり相性が悪かった記憶が有ります。ただ、それから年月を重ね、2連勝式全盛の時代から3連勝式やワイドの登場、投票方式の多様化(インターネット投票等)を共に、どの場でもそんなに車券相性に振れ幅が無くなると(だいたいどこも変わらず良かったり悪かったり)、船橋では船橋なりの楽しみ方を覚えていく事になります。
それでも静岡県在住の時代は、そんなに頻繁には足を運べなかったのですが、2012年11月に仕事の関係で東京都内に移り住んでからは、川口と共に、最も身近なオートレース場として、足繁く通う事になります。それからしばらくして、船橋がヤバいらしい、というような噂を少しずつ耳にするようになっていきました。
それからの顛末は皆様ご承知の通りで・・・いよいよ迎えた、2016年3月21日。
この日は、少し肌寒い朝でした。
空の青い部分は殆ど見えず、大部分が雲に覆われていました。
午前9時に開門、その前には既に指定席券が完売していたとの事です。
良走路で迎えた1Rより、レース終了後、出走8選手が、勝利選手を先頭に(以降は枠番順に)1周のパレードラップ。まるでカーテンコールのように、選手1人1人が思い思いに観客に手を振り、このオートレース発祥の地との別れを惜しんでいるようでした。
午後に入ると、雲が晴れ、少し強めの日の光が差し込むようになってきました。西の空へ向けて日が傾き始めると、1・2コーナーの座席の前あたりは、強烈な直射日光が差し込み、眩しく、少し暑いくらいでした。
そして、最後の開催の最後のレース、プレミアムカップ優勝戦は、最後を飾るにふさわしい激戦となりました。特に「絶対勝ちたい」という思いが人一倍強かった永井大介選手が、スタートから道中の展開から、全て自分のものにして勝利を収め、これに青山周平選手、中村雅人選手が続き、船橋ワンツースリーを達成。最後の最後まで、船橋最強軍団の健在ぶりを見事にアピールしてくれました。
結果そのものは、昨年末のSS王座戦の1・2着が逆転しただけ、現在のオート界で強い者がそのまま強いレースを見せたという形にはなりましたが、決して単純なレースで無い事は、道中の展開が物語っています。
永井大にしても、まずそもそも、これだけスタート巧者が揃った優勝戦のメンバーの中で、キッチリスタートを決めなければならず、その通りに決めてきました。青山周に続く2番手スタート、理想的な展開です。驚異の試走3.25をマークし、同じようにスタートを決めたかった鈴木圭が、2コーナーの立ち上がりで内の木村武に張り込まれ少し後退してしまった事を考えると、この位置をキープ出来たのが大きかったと思います。更に言えば、1周4角の攻めでは膨らんでしまったものの、早めに再度青山周を捌き、先頭に立つ事が出来たのがポイントでした。この攻めが遅れれば遅れる程、タイヤへの負担が増し、逆転が難しくなっていたかもしれません。そして、ここからゴールまでは、とにかく「抜かせない」競走。普段は開けて大きく回る永井大が、ハイペースの中でも内を締めて抜かせない競走に徹し、青山周の再度の攻めを最後まで退けてのゴール。これを、絶対勝ちたいという執念と言わずして、何と言うべきでしょうか。
最後のレースでこの結果、最高の形での終幕になったと思います。車券的には、永井大=鈴木圭の絡みを強めに買っていたため、的中したものの資金配分を誤り少しガミってしまったのですが、もはやそんな事はどうでも良い事です。
この優勝戦メンバーも、勝利した永井大を先頭に、1周のパレードラップ。鈴木圭や荒尾聡は、万感の思いで涙にくれていました。船橋所属選手も他場所属選手も、やりきれない思いは同じであると感じた瞬間でした。その姿に、私も涙を流さずには居られませんでした。
その後に行われた表彰式、そして閉場セレモニーは、沈みゆく西日を浴びながら1・2コーナーの辺りで眺めていました。千葉県知事や船橋市長が登場するや、ブーイングや「帰れ」コールがメインスタンドから上がった時に、思わず口から出た言葉は、「やっぱそうなるよなぁ・・・」
何となくポッカリと心に穴が開いたような感じだったのですが、セレモニー終了後、選手全員が走路を1周ゆっくりと歩いて来た時に、手を振りながら声を掛けていると、涙腺が崩壊の一途・・・一緒に見ていたレース観戦仲間と一緒に、この日一番泣きました。
悔しさとか寂しさとか、「卒業」的な心境とか、そんなものが一気に押し寄せた、という感じでしょうか・・・言葉にするにはちょっと難しいのですが。
その後、走路が開放され、最後のイベントである「オーバルウォーク」へと移っていったのですが、当初は30分間の予定であったものの、希望者が相当数に達したため、予定時間を大幅延長(かつ、おそらく警備の関係で一部のみ開放)という形で、最後の最後まで中断させる事なく行われていました。このため、イベントが終了した時には既に空は闇の中、確か19時半を過ぎていたと思います。昼間は少し暑いくらいだったのに、冬に逆戻りしたかのような肌寒さが心身を襲っていました。
いつもより早い朝の開門から、いつもよりかなり遅いイベントの終了・・・船橋の最終日にして、おそらく「一番長い日」は、こうして暮れていきました。
・・・それから4日経ちましたが、正直、まだ実感が沸きません。
前予想のコラムの中で、出走表を打ち込む時も、しばらくは「永井大(船)」とか「青山周(船)」と無意識的に書いてしまう事でしょう。そして、その度にBackSpaceキーで削除して打ち直す・・・そんな事の繰り返しになるかもしれません。
1976年の伊勢崎オート開場以来、40年もの長きに渡り6場体制を堅持してきたオートレース業界にとって、その体制の終焉と5場体制への移行というのは、史上においても大きなインパクトを持ち、大転換期を迎えている事を如実に表す出来事と言えるでしょう。
そして、様々な思いはあるものの、出来れば無くなって欲しくなかったという思いは勿論あるものの、もはや受け容れるしかない既定路線であり、これに関してとやかく言うのは遅きに失しています。
やはりこれからの課題は、これ以上この流れが加速しないようにする事。
そのために、何が出来るのか、という事でしょう。
個人としては・・・普通のサラリーマン(ITエンジニア)として生きる事を決めている以上、関わり方には限界がありますが、その中でも出来る事は何だろう、と思って続けているのが、このGambooコラムかなと思っています。この中で、オートレースの面白さ、奥深さなど、自分がこれまで経験してきたけど表現する場が無くて表現できなかった事を伝えながら、殆どはただの自己満足みたいなものだし、たぶん小難しい事言ってるんだろうなぁとは思いつつも、少しでも多くの人に興味を持ってもらえたら嬉しい、ただその一心で続けています。
特に、自分よりも下の世代が興味を持って、積極的に車券を買ってくれるようになる事・・・これ無くしては、公営競技の未来は厳しいものになると思っています。彼らは、我々よりも更に進んだ「ゲーム世代」。オートレースのみならず、「推理と実利のゲーム」とも言うべき公営競技に対して、興味を持ってくれる事・・・その、本当に少しでも良い、これっぽっちでも一助になれば、これ以上の喜びはありません。
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船橋の、一番長い日。
2016/03/25 7:01 閲覧数(4292)コメント(12)
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