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斉藤さん

2014/04/12 5:18 閲覧数(1670)
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『四日市はどうだった。』


斉藤さんからの電話だった。


4月7日、月曜日の出来事。
エキサイト四日市バザールと四日市ナイターに伺わせて貰い、千葉の松戸に帰って来た日のこと。
西武園記念三日目が終わり、打ち拉がれながら愛犬の散歩が終わったところの電話だった。


『四日市ナイターと西武園記念、滅多打ちで不貞腐れてました。』
『ハッハッハ。』


電話口で愉しそうな笑い声が聞こえる。


『そうか、そうか。今日は、手伝いに来ないのかい。』
『行ける元気が有りません。』
『ハッハッハ。』


さっきより大きな笑い声をあげてくれる。
競輪小僧のステージでも欲しい笑い声。


『斉藤さんが居るなら、手伝いに行きますよ。』
『頼むよ。待ってるから。』


斉藤さん。
斉藤さんとは、母親のカラオケスナックの常連さんで、親子共々御世話になっている競輪紳士である。
競輪をこよなく愛し、ニッカンスポーツを必ずポケットに忍ばせている。


店に到着し、着替える間もなく


『四日市、八レース始まるぞ。』


と、言われる。


慌てて携帯を出し、レース観戦をする。
決勝の様に、二人で盛り上がる。
その光景をママ(母)が、冷ややに眺めている。
その視線に気付きながらも、二人で盛り上がる。
三連複の高配当に、斉藤さんは御満悦だった。
松戸場外にて、西武園記念では三万円負けて、四日市ナイターを前売りで買ってから店に寄ってくれたと話してくれた。


『泣け無しの金で、四日市ナイター買っといて良かったよ。』
『おめでとうございます。僕も参戦します。』
『やろうやろう。当てよう。』


勤務中、競輪に夢中になっている奴に競輪の神は微笑んでくれず。
斉藤さんは、西武園記念の負けを徐々に取り戻す。


『決勝当たれば良いんだよ。』
『決勝は当たりますよ。』
『どうせ、とんでもないところ買ってんだろ。』
『しっかり、武田アタマで買ってますよ。』
『アタマは堅いな。』


四日市ナイター決勝。
武田豊樹選手のヒモ探し。


イベントをさせて頂いた、初日の四日市競輪場はいつもと違う雰囲気で賑わっていた。
武田選手が走るからだろう。
初日特選前、盛り上がりに混じっている張り詰めた空気感は、グランプリとは一味違う緊張感を与えてくれる。


『武田はどんなレースをして、どんな強いレースを魅せてくれるのか。』


と、言わんばかりに皆が一人の競輪選手に集中する。
歴代のトップ選手への眼差しと一緒だろうと推測出来る。
結果は、圧倒的な強さで一着。


最終日もいつもとは違う空気感な筈だ。
後悔する。
最終日まで残って、本場決勝観戦をすれば良かった。
後悔しながら、斉藤さんとレース観戦をする。


武田ー小倉、スジの武田ー阿部、武田ー竹内、武田ー小川で二車単は売れている。
武田選手のアタマから万遍無く売れている。
僕と斉藤さんは、買い目が被る。
武田ー坂口に重きを置いている。


『武田ー坂口で来たら、僕バイト辞めれます。』
『良いところ見るね。俺も武田ー坂口から厚めに行ってるよ。』
『W的中ですね。』
『こりぁ、当たりだろ。竹内の番手なら坂口絡むよ。』


今、思い起こすと全くレースを読めていない二人の会話だが、その時は確信に満ちていた。
武田ー坂口だけではなく、坂口ー武田まで買い目が斉藤さんと同じだった。


決勝の結果は。
小川ー竹内ー小倉で十万車券。
竹内ー坂口ラインが二車でも果敢に先行した。


『これは取りました。竹内先行しましたよ。』
『よし。竹内行けるところまで行け。』
『武田、後方に置かれました。』
『予想通り。バックで武田の一捲りの展開だよ。』
『はい。車間が空きました。武田追走出来ます。坂口なら。』
『坂口もう出ろ。』
『坂口もう行け。』
『坂口~。』
『坂口~・・・。』
『あぁ~。』
『あぁ~。』


本場はどんな雰囲気だったのだろう。
競輪紳士が集う四日市でも、しょうもないヤジがあったのだろうか。
『武田!何してんだ!金返せ。』
『武田!このメンバーで勝てないのか。』
『坂口!余計なことするな。』
『坂口!地元で何してんだ。』
こんなところだろうか。
こちらでは、違う展開になっていた。


『武田、飛びましたね。』
『飛んだなぁ。俺の車券も飛んだよ。』
『またまた~。小川アタマ買ってるじゃないですか。』
『買える訳ないだろ。お前と同じ坂口アタマしか買ってねぇーよ。』
『坂口、良いブロックでしたね。』
『良かったねぇー。あの武田を止めたね。』
『久しぶりに良いブロック魅せて貰いました。』
『あのブロックは凄いね。坂口はちっちゃいよな。』
『156センチですよ。』
『そうだよな。あれは意地だな。マーク屋の意地だな。』
『そうですね。失格覚悟の様に観えました。』
『結局、竹内残してるしな。坂口は強くなるよ。』
『そうですね。でも、あのまま前に踏んでたら武田ー坂口でしたよ。』
『踏んでくれればよぉー。』
『踏んでくれてればぁ~。』
『お前の買い目、何だったけ。』
『武田ー坂口 坂口ー武田です。』
『ハッハッハ。俺もだよ。買い方が下手だね~。』
『お互い様でしょ。』
『ハッハッハ。』
『ハハハハッ。』


その一部始終を観ていた、ママ(母)が一言。


『あんた達、馬鹿だね~。』


と、一蹴。
それを聞いて、斉藤さんと僕はまた笑った。
一文無しの二人はとにかく笑った。


その後、斉藤さんは坂口晃輔選手のブロックを噛み締めながら黒霧島を粛々と呑み続けた。


帰り際に斉藤さんが


『坂口のブロックで武田が飛んで、俺の眼鏡が壊れたよ。』


と、余りの驚きで落として壊れた眼鏡を高らかに掲げて笑いながら、いつものタクシーには乗らずに電車で帰って行った。


その哀愁に満ちた背中は、競輪の神より素敵に観えた。


坂口晃輔選手
ありがとう。
斉藤さん
ありがとう。


斉藤さん
今日から、高知記念始まりますよ。



競輪小僧
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コメント(7)

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セーナパティ

競輪小僧さん、思わずバーのカウンターで、博打好きのロクデナシが、喧騒している情景が思い浮かぶような、素晴らしい文章ですね。

競輪小僧さんとは、後閑選手のトークショーで、喫煙所でお話させていただき、その後の立川ダービーでも…

感じたのは、競輪小僧さんて純粋で、優しい人だなぁと。

今日からの高知記念、頑張って車券当ててください!私は1Rの台選手から勝負します。
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kaito

君は、競輪ファンの宝物。

今後も、アホでいてほしい。一生イジラレキャラでがんばれ!ww
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Majin

情景が浮かびました。
ぐっじょぶーを10回押しました。
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バケラッタ6340

昔はこういうブログを、アメブロで書いてましたよね。読みたかったブログをこちらで書いていただき、ありがとうございます!
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まくりん

朝の満員電車でなんだかほっこりさせていただきました。
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ヒラッキー

武田に賭けたが、ホントいいブロックでこちらはガッカリでした・・・
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