到達…東日本全競輪場制覇。

最後の砦であった静岡競輪場に足を踏み入れ、ついに達成。


思えば今からおおよそ30年前、競輪のケの字も知らぬ20歳の若者が、職場の先輩に連れられ訪れたのが宇都宮競輪場。とてつもなく暑い、熱い、暑い夏の日であったことを覚えています。

ヒラ開催(今で言うＦ2戦)であったにも関わらず場内は物凄い人と熱気。マークシートはなく車券投票は口頭若しくは手書き。締切ギリギリの投票所では売場のオバチャンとファンが小競り合い。予想屋の弁舌の上手さに思わず聞き入ってしまう自分…が、「こいつは嘘っぱち野郎だから…」先輩に導かれその場を後にしたりもした。そして、危ない系の輩が一角を陣取っていたり、レース終了後決定放送前に両替を行う商人、場内Ｂ級グルメに順番待ちする人や落ちてる車券を一つ一つ確認する人。どれもこれも新鮮に映ったものでした。

更にバンクに目をやればこれまた新鮮。美しいバンクをシャーシャーと音を響かせ疾走する選手。そこへ金網にへばり付き、鬼の形相で罵声を浴びせる人達。落車を目にし、動かぬ選手を見て死んでしまったのでは…と心配する自分をよそに、その選手にさえ罵声を浴びせる人も…競輪場はまさにミラクルワールドの連続。

そんな僕のデビュー戦は８月のお盆。無料飲水コーナーで、好んで飲まないはずの冷茶をガブガブ飲んでの初競輪、結果は見事ビギナーズラック。僅かばかりの小遣いが諭吉…ではなく聖徳太子に化けてくれました。先輩が買ってくれた当たり餅(醤油で焼かれノリが巻いてあるだけの餅)のご利益かな…と自問したり。とにもかくにもバンクに魅せられ、長い競輪人生のスタートとなったのです。


時は流れて平成の世…昨年は函館、そして今年に入り伊東温泉も手中におさめ、昨日、残る静岡をついにゲット。廃止となった花月園を含む、東日本地区の全場制覇となったのです。

その静岡競輪場には少々感動。広々とした場内は平坦で施設も綺麗。駅から遠いのが難点ですが、僕の中ではベスト３に入る競輪場。東日本最後の砦で大当たり…妙な嬉しさを感じたのでした。


さぁ、残る宿題はただひとつ、全ての競輪場制覇。かつて全国に５０あった競輪場も今や４３場。目標達成のハードルが下がったことに少しばかり淋しさも感じます。古き良き昭和の競輪から大きく変貌した現代ケイリンですが、号砲と鐘(ジャン)の音だけは変わりません。これ、どうやら僕にとっての世界記憶遺産のようです…